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「もんじゅ」撤退こそ英断 廃炉への秘策とは

前田史郎 朝日新聞論説委員

 「Too big to fail」という言葉がある。大きすぎて失敗させるわけにいかない、といった意味だ。

 巨額の開発費用がかかった米軍の最新鋭ステルス機「F35」について、アメリカの学者がこの言葉を使って論評していた。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を取材していて、ふとこの言葉が浮かんだ。

 原子炉の建設にかかった費用は約1兆円。毎年、維持費だけで約200億円かかる。プラントの管理は、多くの雇用も生む。

 燃やした以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」の高速増殖炉は、資源の少ない日本にとって悲願のプロジェクトだった。

 「撤退」は壮大なる失敗を意味する、と関係者はみる。もんじゅこそ、後へは引けないプロジェクトになっているのではないか。

 1995年にナトリウム漏れ火災事故をおこして以来、もんじゅは運転が止まったまま約20年になる。この間、実用化への具体的な成果は出せていない。それでも、国は「将来のエネルギー事情を考えると必要な技術」と、国費の投入を続ける。

 もうそろそろ冷静に考え直す時期だと思う。
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 2012年秋、もんじゅでは約1万件もの点検漏れが発覚した。これを受け、原子力規制委員会は昨年5月、原子炉等規制法に違反するとして、もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構にもんじゅの運転再開準備禁止命令を出した。それ以来、約330人の職員は運転準備をいっさいできず、点検のやり方をひたすら見直している状況だ。

 ただでさえ複雑な原子炉の点検現場で、「1万件の放置」は重大だ。

 「電力会社ならあり得ないことだ。最初に聞いたときは驚いた」

 命令を決定した当時、原子力規制庁次長だった森本英香・環境省官房長は言う。

 規制委の調査によると、その実態は

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