2014年11月21日
後に判明したバックステージの状況、さらに帰国後の精密検査の結果。
今のところ、ではあるが、「もう二度と滑れない」ほどの事態にはなっていない。幸い、こちらが気をもんだほどは、あの時点で生命の危険があったわけではない。
しかしそれでも、彼は滑るべきではなかった、周囲も彼を止めるべきではなかったか――そんな意見が多く出ているが、なぜ羽生結弦は演技を強行したのだろうか。
トロントレポートでも記したが、この夏の彼はアイスショー、あらゆるイベント、取材、CM撮影等に忙殺されていた。
オリンピックから溜まり続けている疲れで、脚、背中、腰……あらゆる古傷を悪化させてもいた。
このままでは自分はコマーシャリズムに潰されてしまうのではないか――そんな恐怖を、この夏の彼は何度も感じていたのだ。
小さなころから望んでいたオリンピックチャンピオン。やっとの思いでその場所にたどり着いたのに、その結果手に入れたものは、これなのか――そんな思いは、ピョンチャン五輪での連続優勝を目指す気力も奪ってしまった。これから4年間、さらに過酷なアスリート生活を続けて再び金メダリストになっても、そこに待っているものは何かを、知ってしまったから。
スケートが好きなだけだった彼が、練習する時間も取れず、ついには腰を悪化させて滑れない身体になり……。この夏、ある時、あるシチュエーションで、思い余って叫んだことさえあった。
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