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心技体プラスαで飛び続ける葛西が次に目指す伝説

目標はフライングで200メートル、飛距離を追求する史上最年長優勝の42歳

増島みどり スポーツライター

スキー・ジャンプW杯の団体開幕戦で2位となり喜ぶ竹内拓、葛西紀明、伊東大貴、清水礼留飛(左から)=11月23日、ドイツ・クリンゲンタールスキー・ジャンプW杯の団体開幕戦で2位となり喜ぶ竹内拓、葛西紀明、伊東大貴、清水礼留飛(左から)=11月23日、ドイツ・クリンゲンタール
 「レジェンド」が、2014年の流行語大賞に決まろうという頃、その言葉を社会に浸透させた42歳の男は、早くも過去から軽やかに飛行し、新たな伝説を、しかもわずか2日間で何ページも書き加えていた。

 ソチ五輪ノルディックスキー、ジャンプの個人で銀、団体で銅メダルを獲得した葛西紀明(土屋ホーム)が、ポスト五輪シーズンとなる今季のW杯個人第2戦(フィンランド・ルカ)で3位となり、同地で続いた第3戦では145メートルと最長不倒を飛んで、自身の記録を塗り替える42歳5カ月でのW杯史上最年長優勝を果たした。世の中が、のんびりと今年を振り返っている間に、言葉より、流行よりも遥かに速く時代を駆け抜けるトップアスリートの進化に、改めて驚かされる。

 昨シーズン終了後の春から数か月で120回を超える表彰、講演、イベントをこなし、20年以上続けてきたシーズン開幕への準備にも影響が及んだという。11月上旬、転戦前のインタビューで「メンタル(心)、テクニック(技)、フィジカル(体)どの調整がもっとも遅れているか」と質問すると、「全てです。どれもいつもの半分以下だと思う」と、体重オーバーや技術の微調整など準備不足への不安をにじませた。しかしどれもが揃わない苦境にも、レジェンドだけが開けられる「第4の引き出し」が存在するのだろう。心技体、そして「脳」である。

 「前のシーズンで、理想のジャンプを身体に残せた手応えがある。そのイメージが冬に入ったら出来上がってくるかもしれない」と、不安以上の楽しみを強調すると茶目っ気たっぷりに言った。

 「この準備不足でも勝てれば、

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