ジャンプが跳べなかったNHK杯で見せた演じる心
2014年12月13日
中国杯フリーでの出来事に続き、満身創痍のままNHK杯に参戦したことも「強行出場」と評されてしまった羽生結弦。
しかし前回とは、少し勝手が違う。思った以上の彼自身の慎重さがわかった現在でも、中国杯は無理をし過ぎだったと筆者は思うが、開催まで時間があったNHK杯はまったく事情が違うのだ。
ただ、彼の硬い意志が出場可能な状態まで彼の身体を持っていった――周囲も「これならばいけるだろう」と納得する状態まで。
泣いて弱音を吐いた時期から短期間。わずか5日で、よくここまで戻したものだと思う。
実際、いちばんジャンプの調子が良かった大阪での非公式練習(11月26日)では、ブライアン・オーサーコーチも連盟関係者も唖然とするほど、いつもどおりに4回転が決まっていた。
実は仙台の練習ではまったく成功できずにいた4回転が、ギャラリーが揃った途端に決まるようになり、一番驚いたのは本人だったというが。
NHK杯、出場決定までの羽生結弦の苦闘はほんとうに彼らしく、「強行出場」などとは程遠い、手放しで称賛したい日々だったのだ。
「でも期間中でいちばんジャンプが跳べていたのは……実は非公式練習の日だったんですね」
とは、周囲の人の声だ。「出場していいぞ!」、そのお墨付きをコーチや連盟からもらわなければならない、その日が最も調子が良かったなど、いじらしいくらい彼らしいではないか。
しかしやはり、NHK杯。
負傷と、短かすぎる調整期間の影響は、如実に現れてしまった。
さらに今回は、中国杯での衝突の恐怖を思い出してしまうという、常にはない辛さも感じながらの一戦だった。仙台でひとりで滑っている間は問題なかったのに、公式練習も6分練習も、6人の選手で滑る状況が、やはり怖かったのだ。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください