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お稽古ごとのバレエから、芸術としてのバレエへ

2014年のバレエを振り返る――最大のニュースは木田真理子さんのブノワ賞受賞

菘あつこ フリージャーナリスト

 今年1年間のバレエを振り返って、日本のバレエ最大のニュースは、春、スウェーデン王立バレエの木田真理子さんがブノワ賞を受賞したことだと私は思う。

他にスイスのローザンヌ国際バレエコンクールやアメリカのジャクソン国際コンクールでも日本人の活躍が目立ったけれど、ブノワ賞の意味はまったく違う。

ブノワ賞を受賞後、初めて帰国し出身地の大阪府を訪れたバレエダンサー木田真理子さん=2014年8月、大阪市西区ブノワ賞を受賞後、初めて帰国し出身地の大阪府を訪れたバレエダンサー木田真理子さん=2014年8月、大阪市西区

 プロのバレエ・アーティスト、芸術家として、素晴らしい活躍した人に贈られる賞、何かに自らエントリーして獲得しにいく賞ではなく、日々、自らの芸術活動に身を捧げていて、それが世界でもっとも素晴らしいと認めれた時に受けることができる賞。何十倍もの競争率でロシアやパリのバレエ学校に入ったエリートたちの中でも、そこからバレエ団に入り、さらに主要な役のチャンスを得て、それを素晴らしく踊ってブノワ賞を得るという人は本当に、本当に、針の穴のように限られたスターのみだ。

 そんな賞を日本人が受賞する時代が来たのだ──というのが、大きな感激だった。もちろん、日本で創ったり踊ったりした作品というのではなく、彼女が海外のバレエ団で仕事をして得た成果なのだけれど。

 日本にバレエが入ってきたのを、1912年にジョヴァンニ・ヴィットリオ・ローシーが帝国劇場歌劇部主任として来日しバレエ指導を始めた時と考えると、それから約100年あまり。それ以来、日本のバレエは、「女の子が生まれたら習わせたい」または「女の子が憧れる」、“お稽古ごと”として、日本社会に根付いてきたように見える。

 バレエが芸術の一分野であることは、誰もが知っていることだろう。美術や音楽と同様に一つの芸術ジャンル。けれど、これまで、日本人の多くの人にとってバレエは鑑賞する芸術というよりも、“お稽古ごと”のイメージが強かったのではないだろうか。今、国内には4500カ所を超えるバレエ教室があって40万人以上の人がバレエを習っているという

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