衝撃的な演技を見せたピョンチャン五輪の星
2014年12月27日
シーズン前半の山場となる、グランプリファイナル。
日本からは今年も3名の男子選手が進出。女子もグランプリ初参戦の本郷理華が健闘し、スペイン・バルセロナは連日、オリンピック後のシーズンとは思えないような盛り上がりを見せていた。
そしていつものグランプリファイナルと少し違ったのは、同時開催のジュニアグランプリファイナルも、たくさんの視線が注がれていたこと。
女子は6人中3人がロシア勢、3人が日本勢で、「まるで日露戦争!?」と話題になり、全日本ジュニアチャンピオンの樋口新葉を筆頭に3人の初出場選手たちが奮闘した。
そして同じくファイナル初進出となった男子の宇野昌磨と山本草太が、なんとワンツーフィニッシュ! ジュニアグランプリファイナルの歴史において、男女合わせても史上初となる快挙だった。
ソチ五輪シーズンにはジュニアなど眼中になかった報道陣も、3年数か月後を見据えれば、今シーズンは彼らを無視するわけにはいかない。ピョンチャン五輪の星たちがめきめき力をつけていく姿を見るのは、本当にわくわくする体験なのだ。
まずは総合得点238.27というジュニアとしては驚異的な点数――このまま14年シーズンのシニアグランプリに出ても、6大会中5大会で表彰台に乗れるほどのスコア――でジュニアファイナルを制した、宇野昌磨。
少し時間をさかのぼり、今シーズンの彼の急成長を振り返ってみよう。
9月14日――。
取材帰りの電車の中で、スポーツニュースのヘッドラインにフィギュアスケートの話題がひとつも出てこないことに、驚いていた。先ほどまで見ていたあの凄まじい試合が、大きなメディアではほとんど報道されていないのか、と。
絶対に記憶から消えないような、衝撃的な演技を見せられた一戦。それが大々的に報道されないことなど、いまや「人気スポーツ」となったフィギュアスケートを取材していて、とても珍しいことだった。
「なるほど」と思う。なるほど、まだみんな、「彼」に気づいていないのだ。彼はまだ、表舞台には登場していない選手のか、と。
その試合は、ジュニアグランプリシリーズ第4戦、愛知大会。男子シングルで前年のファイナルチャンピオン、ボーヤン・ジン(中国)に次ぎ、日本の宇野昌磨が2位。
国内開催の国際試合……とはいえ、ぐっと規模の小さなジュニアのグランプリだ。全日本選手権などに比べればずいぶん小さな会場で、報道陣の数も少なく、のんびりした雰囲気のなかでの一戦。
しかしその一戦は、宇野昌磨というスケータ―のヒストリーを紐解く時、きっと何度も振り返ることになるだろう記憶に深く残る一戦だった。
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