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警察の捜査能力は下がっているのか?

通信傍受の件数や防犯カメラの台数は増えるものの、高くなった起訴のハードル

小野登志郎 ノンフィクションライター

捜索を終え、工藤会トップの野村悟容疑者宅を出る福岡県警の捜査員=2014年10月6日、北九州市小倉北区拡大捜索を終え、工藤会トップの野村悟容疑者宅を出る福岡県警の捜査員=2014年10月6日、北九州市小倉北区
 今年9月に始まった福岡県警による特定危険指定暴力団工藤会への一斉捜査で最大の証拠となったのは、組員の使用する携帯電話への通信傍受、つまり盗聴だったと指摘されている。

 1986年に日本共産党幹部宅に神奈川県警が盗聴していたことが発覚し、国会等で大問題になったことがあったが、盗聴はかつて警察による違法捜査の代表的手法だった。公安警察が共産党や極左団体などの動向把握のために秘密裏に行われるのが通例で、一部報道などで盗聴の可能性を指摘されても警察当局は決して盗聴していることを認めることはなかった。

 だが、2000年に警察庁の強い要望により通信傍受法が施行されると、銃器薬物犯罪や組織的殺人などの一部の罪の捜査で盗聴が合法化されることになった。「工藤会側も通信傍受への対抗策として暗号を使ったり、他人名義の飛ばし携帯を使うなど対策を立てていたようだ」(在京の暴力団関係者)との話もあるが、人の口に戸は立てられず。最後は組員の一部が、民間人襲撃事件に参加した場合の報酬についてうっかり電話で話したのを聞かれてしまったといわれている。通信傍受の回数は年々増加しており、2013年は1年間で約2万回の通話が傍受されたという。今後は振り込め詐欺や集団窃盗事件にも対象が拡大される見通しで、詐欺グループのリーダーにまで捜査の手が伸びることも多 くなるだろう。

 巷間、よく「捜査能力が落ちた」と言われることの多い昨今の警察だが、捜査で使える手法は通信傍受を含め、むしろ増えているという。

 よく知られているところでは、DNA鑑定の精度向上により、現場に残された髪の毛や皮膚片といった微物から容疑者が特定できるようになった。これ以外にも、全国に張り巡らされたNシステムや携帯電話の基地局などから容疑者の足取りは容易につかめるようになったし、今では街中のいたるところで防犯カメラも見かけるようになった。カメラの画質も年々向上しており、ぼけた画像から人物を特定する画像解析方法も精度を増しつつある。

 カーナビに残される走行記録から車の走行ルートをたどることも可能だし、コピー機に残るメモリからどんな文書がコピーされた再現することも可能。デジタル化の進展は社会の匿名化を進めているように見えるが、警察的には逆である。デジタルであるがゆえに我々のあずかり知らぬところに証拠が残されていく。今の警察にとっては、電化製品を一切使わぬアナログな犯行ほど捜査が難しいということになろう。

 では、なぜ警察の捜査能力が落ちていると言われるのだろうか。

 一つは本来は“身内”であるはずの司法機関の変化だ。裁判員制度の導入など ・・・ログインして読む
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筆者

小野登志郎

小野登志郎(おの・としろう) ノンフィクションライター

1976年、福岡県生まれ。早大中退後、フリーのライターとして執筆活動を始める。在日中国人や暴力団、犯罪などについて取材し、月刊誌や週刊誌に記事を掲載している。著書に『龍宮城 歌舞伎町マフィア最新ファイル』『ドリーム・キャンパス』『アウトロー刑事の人に言えないテクニック』など。

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