北京世界陸上男子マラソンの選考会が終了、びわ湖毎日ではアフリカ勢以外にも及ばず
2015年03月04日
前を走る「世界」がどんどん遠ざかっていく現状で、唯一、その背中を捉えたのは、順大時代「元祖・山の神」と呼ばれた箱根駅伝5区のエキスパート、今井正人(30=トヨタ自動車九州)が東京で2時間7分39秒(7位)と、3年ぶりの7分台となる日本歴代6位の記録をマークした走りだろう。卒業後、日本のオリンピック男子マラソン最後のメダリストでもある、同社陸上部の森下広一監督(47、バルセロナ五輪銀)に師事する。08年の北海道でマラソンデビューを果たして以来、6年かけて昨年初めて2時間10分台を突破。10本目でついに実力通りともいえる7分台をマークした「超・遅咲き」である。
これまでは先頭集団から脱落すると、淡泊にレースから消えていた。マラソンでは40キロを通過してから残り2.195キロを、「上がり」と表現し、最後までどれだけ力を残し、使い切ったか、いわば底力のバロメーターとする。東京での今井は上がり7分2秒で全体でも5番目の好記録。アフリカ勢に囲まれるなか、かつて山を攻めた持ち味である忍耐力、粘りを発揮した走りを、数字も正確に標したといえる。北京世界陸上代表に選ばれれば、自身初の国際大会代表で、来年のリオ五輪へ弾みをつける。
日本の男子マラソン界にとって、2012年の藤原新(33=ミキハウス)以来3年ぶりとなる7分台がマークされた一方、選考レースでは日本選手の優勝はなかった。「日本人トップ」と、メディアではどうにも迫力不足のタイトルが繰り返された。別府大分では、門田浩樹(29=カネボウ)が2時間10分46秒で2位になったが、ほか3レースでは表彰台にすら上がっていない。
日本陸上競技連盟(日本陸連)は昨年4月、実業団の枠組みを超えて集団で世界に立ち向かうため男子12人、女子9人から成る「マラソンナショナルチーム」を結成。作夏も合同合宿を行うなどして選手、指導者の意識を高め、五輪や世界選手権といった夏の気象条件に供えた強化を図っている。宗猛・男子中長距離マラソン部長ら強化陣営は、「個の力だけでは世界を席巻するアフリカ勢には勝てない」と話し、ナショナルチーム制で新しい強化方法を模索する。
しかし、今季4選考会を振り返ると、その照準にはズレが生じている。
確かに4レースの優勝はアフリカ勢に独占された(ケニア2、エチオピア1、エリトリア1)が、福岡では日本人最上位、4位の藤原正和(ホンダ)は、モンゴル出身で現在は三重県桑名市に拠点を置くNTN陸上部に所属するセルオド・バトオチルに30キロでスパートされ敗れている。また1日のびわ湖でも前田が同じく、バトオチルとイタリアのメウッチに38キロで振り切られた。
陸連が照準とする「アフリカ勢」という森を追いかけるあまり
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