在宅重視を打ち出した今回の改定、職員の給与を上げると言っているが……
2015年03月10日
家族を介護地獄から救うために“介護の社会化”をうたい2000年に介護保険制度がスタートしたが、これは裏返せば伸び続ける高齢者の医療費を抑制するために国が導入したものでもある。しかし、高齢化には歯止めがかからず、介護費用は膨らみ続け40歳から支払っている介護保険料も、このままいけば倍になる可能性もある。
そこで、4月から国は介護サービスの価格を決める介護報酬を引き下げることを決めた。
この介護報酬の見直しは3年に1度行われるが、今回は9年ぶりのマイナス改定であり、下げ幅は過去最大ではないもののほぼ同水準の引き下げとなった。多くの人は介護報酬の引き下げは介護サービスを提供する事業者だけに影響を及ぼすもので、自分達には関係ない、と思っているかもしれない。しかし、現実はそうではない。
国は在宅重視を打ち出し、今回の改定で、24時間の定期巡回・随時対応型サービスなどの在宅サービスやグループホームでの看取り加算などを引き上げる。「住み馴れた地域で最期まで暮らせる」ということは、全ての人が願うことでもあり理想の形かもしれない。しかし、この引き上げが意味しているのは「最期は医療費をかけずに病院ではなく地域で」という国による“政策誘導”でもある。介護報酬の改定によりサービスの価格がコロコロ変われば、提供されるサービスの量や質も大きく左右されることになる。つまり、一番大きな影響を受けるのは、介護サービスを利用する私達であり、介護報酬改定のニュースは決して他人事ではないのである。
具体例を医療サービスの価格を決める診療報酬で挙げてみたい。2年に1度改定が行われる診療報酬の改定により、医療現場も翻弄されている。例えば、2006年の診療報酬の改定では症状が重く手厚い看護が必要な患者が入院する“急性期病床”の診療報酬が高く設定されたため、全国の病院が急性期病床を増やす方向に方針を転換した。
そのときの条件は、配置する看護師の人員を増やすことと入院日数の短縮だった。その後に何か起きたのか? 入院期間が短くなったため、まだ医療が必要な患者が退院させられる「医療難民」が
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