潮智史(うしお・さとし) 朝日新聞編集委員
朝日新聞編集委員。1964年生まれ。87年入社。宇都宮支局、運動部、社会部、ヨーロッパ総局(ロンドン駐在)などを経て現職。サッカーを中心にテニス、ゴルフ、体操などを取材。サッカーW杯は米国、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカ、ブラジルと6大会続けて現地取材。五輪は00年シドニー、08年北京、12年ロンドンを担当。著書に『指揮官 岡田武史』『日本代表監督論』。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
仕事へのきちんとした取り組み方と精力的な動き、サッカーの本質を見抜く指摘
サッカーの日本代表監督にバヒド・ハリルホジッチ氏(62)の就任が決まった。3月12日に開かれた日本サッカー協会理事会で承認されると、翌13日に来日して記者会見に臨み、早速、14日のJリーグを視察した。
3月27、31日に国際親善試合が組まれており、準備の時間がないなかとはいえ、新しい仕事へのモチベーションの高さと、仕事へのきちんとした取り組み方をうかがわせる精力的な動きだった。
どんなチームを作っていくのかが見えるには、まだまだ時間がかかりそうだ。監督本人も記者会見で「お願いしたいのは少し時間をもらいたいことだ。がまんしてもらって、いい仕事をしたい」と繰り返した。
自信と信念をうかがわせる熱を帯びた語り口だった記者会見よりも印象的だったのは、14日のJリーグ、FC東京―横浜マを視察観戦したあとの言葉だった。
「もう少しやる気と力強さを見せてくれたら、質はさらによくなる」
球際の攻防の激しさ、ゴールに向かうパワーやスピード、走力、運動量など、サッカーという競技を支える本質的な部分での物足りなさを早速、見抜いたということなのだろう。この指摘には、Jリーグだけでなく、サッカー界全体で耳を傾ける必要がある。国内の最高レベルでプレーする選手たちが試合に取り組む「やる気」や「力強さ」の不足を問われることがいかに大きなことか。
そして、つまりハリルホジッチ監督の哲学やサッカー観からすると、そこをおろそかにはしないという宣言と受けとめるべきなのだろう。
ワールドカップ(W杯)ブラジル大会まで日本代表を率いたザッケローニ元監督も「インテンシティー(強度)」という言葉で語った通り、スピードや激しさを追求するのは世界的な流れでもある。日々のトレーニングから、もっと速く、もっと強く、もっと長くと取り組まない限り、選手も国内のレベルは変わってはいかないはずだ。
新監督に話を戻そう。
記者会見で、彼は