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ハリルホジッチ新監督率いる日本代表船出の前に

アギーレ監督問題が残した教訓をどう生かすか、法務部門と強化体制の見直しを

増島みどり スポーツライター

ハリルホジッチ監督の選定について話す日本サッカー強化いの霜田正浩技術委員長(左)と原博実専務理事=2015年3月12日、東京都文京区ハリルホジッチ監督の選定について話す日本サッカー強化いの霜田正浩技術委員長(左)と原博実専務理事=2015年3月12日、東京都文京区
 サッカー日本代表のアギーレ監督(メキシコ)との契約解除からほぼ1カ月で、ハリルホジッチ監督(62=ボスニア・ヘルツェゴビナ、フランス籍)率いる新生日本代表が、早くも親善試合でスタートを切る。6月から始まる「2018年ロシア・ワールドカップ」アジア予選に向けて、監督不在、あるいは代行監督でつなぐといった非常事態には至らずにソフトランディングに成功。代表関係者誰もがホッと胸をなでおろし、1月のアジア杯で8強にとどまった選手たちにとっても、サッカーにありったけの情熱を注ぎ込む完璧主義者の着任は、どこかスッキリしなかった気持ちを切り替えるに絶好機となるはずだ。

  一方で、前代未聞の契約解除で明らかになった新たな問題、組織をより洗練されたものに構築するために浮彫りとなった課題を、日本サッカー協会(JFA)がどう活かしていくかにはまだ時間も議論も必要である。アギーレ前監督を招へいした大仁邦弥会長、原博実専務理事が「混乱をきたした責任を取る」と、減俸を自らに課してけじめをつけたが、本当の責任の取り方とはこうした情緒的なものではなく、組織作りへの教訓につなげる実務にこそある。

  第一に、協会内の法務部門の専門性と強化があげられる。

  アギーレ監督の疑惑が取り上げられた際、日本協会に設置された専門委員会のひとつ、「法務委員会」が事実確認に動き、顧問弁護士である法務委員長1人が前線での対応を行った。自らの法律事務所を持ち、一方で初の事例に対応した委員長の業務は困難を極めただろう。日本協会は、一般的な法律解釈により「推定無罪」を基本方針とし、当初は「起訴」を(結果的には告発受理での契約解除)、続投か契約解除かの境界線とした。しかしスペインの司法の動きや報道を把握するのは不可能で、後手、後手に回らざるを得ず、この間、大型契約を結ぶスポンサー、「JFAメンバーシップ」に登録する約150万人ものサポーターに対しての信頼を損なったといえる。

   「協会の判断が遅く、イメージが傷ついた。契約内容を再確認したい」と話す企業もあった。契約を結ぶ世界的企業、また国際スポーツ団体には今や専従の法務部が置かれ、スポーツ法専門の弁護士が業務にあたる。日本協会にはまだこうした専従部門がなく、これが決断を戸惑った一因ともなった。今後は代表監督に限らず、契約前の身辺調査を含め、問題が起きる前、起きた際の対応にも専従の法務部の充実が不可欠だ。

  2点目は、代表を支える強化体制の見直しである。

  現在は霜田正浩技術委員長のもと6人が、代表強化を含め若年層の育成、普及と全てを管轄する。委員それぞれが専門分野での長い経験と、大きな実績をあげているが、

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