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世界選手権プレビュー 羽生結弦の可能性(上)

敗北か、鬼神の所業か

青嶋ひろの フリーライター

 羽生結弦、日本人初の世界選手権連覇なるか?

 それが今大会一番の眼目ということになるのだろう。

 しかし、今シーズンの彼にもし連覇などできてしまったら、ほぼ奇跡、といっていい。

 筆者は現在の羽生の練習状況、体調、ケガの様子について、報道されている以上のことは知らない。右足首の捻挫は完治しているわけでなく、高難度のジャンプが軽々跳べる状態ではない。その程度の情報しか持っていない。

練習をする羽生結弦拡大世界選手権に向けて練習する羽生結弦=中国・上海
 それでも、もし羽生結弦がアクシデントにも合わず、ケガもせず、病気に見舞われもしなかったとしても、ごく健やかな状態で今シーズンを送ったとしても、やはり難しい一年になっていたはずだ。

 それはもちろん、彼がオリンピックチャンピオンだから。

 既に書いているように、五輪を制して次のシーズン、グランプリファイナルも世界選手権も優勝した選手など、いまだかつて存在しない。

 今シーズンを見れば、チャンピオンのみならず銀銅のメダリストたちさえ、引退せずともまるまる休養を取ったり、シーズンの一部を休んだりしている。

 羽生より若い女子金メダリストのソトニコワ(ロシア)も、今季は一戦も出場しなかった。男子銅メダリストのデニス・テン(カザフスタン)は、グランプリシリーズから出場していたものの、前半はまったくといっていいほどエンジンがかからなかった。

 メダルに届かなかった選手であっても、たとえば団体戦で脚光をあびたロシアのユリア・リプニツカヤなど、世界選手権代表を逃すほどの不調ぶりだ。

 今シーズンを通して奮闘をしているのは、ソチ代表の座を逃したエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)、村上大介、セルゲイ・ボロノフ(ロシア)など、2014年に悔しい思いをした選手ばかり。やはり4年に一度の大きなシーズンに照準を合わせられた選手が、そのままのテンションで翌シーズンも結果を出すなど、難し過ぎるのだろう。

 さしもの羽生結弦であっても、やはり今シーズンはいっぱいいっぱいだったのだと思う。

 かつて経験したことのない、チャンピオンとしてのハードスケジュール。どこに行っても人々の視線にさらされ続けた夏。通常の練習もままならなければ、ケガの療養など、身体のメンテナンスをしているひまもない。

 五輪チャンピオンという最大の目標を達成して、そこで待っていたのがこんな毎日だということに、彼はずいぶん戸惑ってしまったという。

 それでも、立ち止まることなく「勝ち続けるチャンピオン」でいるために、自分を奮い立たせるため、シーズン前の彼は技術面で大きな目標設定をした。

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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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