杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
企業が男子に下駄をはかせるのは新卒女子の高い離職率が背景にある
「就活で揺らぐ『女子学生は優秀』神話」の後半では、「新卒の採用試験で女子の方が優秀。でも、企業は男子に下駄を履かせて採用する」という現象の原因を分析していこう。なぜ、男子に下駄を履かせるかという質問をなげつければ、必ず返ってくるのは「女子は出産子育ての時に退職したり、育児休暇や時短勤務となって長期間第一線から離脱したりするから」という説明だ。だが、それは本当なのだろうか。
日本女子大学現代女子キャリア研究所が2011年に行った調査(25才~49才の女性5155人が対象)によると、子供がいるいないに関わらず全体の約8割の女性が新卒で入った会社を辞めていた。退職の理由で多いのは「他にやりたい仕事があった」「仕事に希望が持てなかった」が上位に並び、「妊娠出産」はずっと下にくる。
ここで、推測できるのは、女性の大半は新卒で入った会社を「妊娠・出産」にたどり着く前に辞めるということだ。新卒での就職先の在職期間は男子よりも女子は短いがその傾向は今も変わらない。転職市場が活性化され、男女問わず離職転職は増えていると思われるが、最新のデータをみても女子は男子よりも離職率が高いのだ。
厚生労働省の2013年度雇用動向調査を見ると、離職率全体は、女子の場合、25歳~29歳は23.6パーセント、30歳~34歳は20.5パーセントとなっていて、男子の25歳~29歳 15.6パーセント、30歳~34歳 12.7パーセントに比べても高くなっている。ちなみに妊娠出産を退職理由とする女性の割合は25歳~29歳は1.3パーセント、30歳~34歳は1.3パーセントと低い水準だ。
つまり、新卒で採用しても女子は離職のリスクが男子よりも高いと考えられよう。
さて、実際、どのように離職していくのかをみてみよう。
私は取材を通して、数多くの20代OLと知り合うが、再度連絡をすると転職していたことが実に多い。
そして、男性ではまずありえない転職傾向が存在する。新卒時に総合職で就職した女子が一般職に転職していくのだ。つまり、ハードに働くことから外れていくことを選択する。
キャリア志向の女子学生に人気の大手企業A社。女子の就職先としてはステイタスが高い。だが、
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