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来シーズンから羽生結弦は勝ち続ける(上)

表現者にとっていちばん大事なもの

青嶋ひろの フリーライター

 羽生結弦の4度目の世界選手権。そして、初めて迎える現チャンピオンとしての世界選手権。

 彼を見る私たちの目、感じる思いは、日ごとにおもしろいくらいころころと変わっていった。

 まずは3月24日、ショートプログラム3日前の、公式練習。全日本選手権以来3カ月ぶりのその滑りを、もう驚きの連続で見るしかなかった。

 練習開始早々、まだほかの選手も身体が温まらず、ジャンプ練習に入らないうちに、早々に跳んでみせたトリプルアクセル。さらに4回転トウ。

羽生結弦エキシビションを終えて
 「羽生君! 跳べるじゃないか!」

 そのジャンプは、3カ月前と何も変わらない。

 開腹までした手術後、しかも足首の捻挫再発という、いってみれば「病み上がり」の身体だ。

 さすがに音楽がかかる中ではなかなか大玉ジャンプは決まらないが、曲かけ後は悔しさに身を任せるようにアクセル、4回転トウ、4回転サルコウと跳びまくる。手術の影響で4週間、捻挫の影響で2週間、計6週間も練習できなかった選手が、だ。

 「すごいな、これなら表彰台くらい軽くいけるのでは?」

 誰もがそんな期待をしてしまう。

 しかし何度か公式練習を見ているうちに、少しずつ不安がよぎってくる。

 初日、2日目……彼の滑りに、キレがないのだ。ジャンプの調子に波はあるものの、不調というほどひどい落ち込みはない。一方でスケートそのものに、本来の羽生結弦らしい溌剌さを見ることができない。

 「羽生君は、このスポーツが点取りゲームだってことを知ってますからね」

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