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異次元を追求し続ける史上最強のジムナスト内村

最高のアーティストそしてファイター、跳馬の大技「リ・シャオペン」も成功

増島みどり スポーツライター

NHK杯の跳馬で「リ・シャオペン」を成功させた内村航平=2015年5月17日、東京・代々木第1体育館拡大NHK杯の跳馬で「リ・シャオペン」を成功させた内村航平=2015年5月17日、東京・代々木第1体育館
 演技に入る前、内村航平(26=コナミスポーツクラブ)が助走の先にある跳馬を、両手をクロスさせながらじっと見つめる。こうした「プリショットルーティーン」は、スポーツ選手が、本番を成功させるためにいわば自分の「型」として行う儀式であり、そこから競技が、体操ならば演技が始まっている。

 東京・代々木第1体育館で行われた(17日)、6種目全ての力を争う個人総合のNHK杯(兼世界選手権選考会)4種目目の跳馬で、内村が大技「リ・シャオペン(中国の李小鵬が発表した技)」に入ろうという瞬間、ファンも「プリショットルーティーン」から見逃すまいと凝視するかのように、場内が静まりかえった。

 世界中の体操選手から敬意と称賛を集めるトップアスリートが行うこの動作を見るだけで、演技が終わっていないのに高揚する。技の完成度だけではなく、それを支える練習、恐怖と勇気、綿密な計算、緊張と冷静さといった、内村の心と頭の舞台裏が演技前に凝縮されているからだ。4月の全日本選手権に続いて2度目の披露に、イメージトレーニングはさらに細かく行われていたはずだ。

 「リ・シャオペン」はロンダ―トからの伸身クエルボ2回ひねり、といっても、普通は全くイメージできないだろう。ただ、助走中に床に手をつくため、その角度を、腕をクロスさせ、跳馬の位置を正面から正確に見据えてイメージしなくてはならないのだという。さら助走から空中でひねりながら跳馬に手をつく際、視野から跳馬が完全に消えている点が特別な難しさだとも言われる。

 「大学1年から100万回はビデオを観て練習してきた。この技が自分の跳馬の終点と決めていた」と信念を明かすが、もしかすると

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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