弱かった市解体の理由と無理やりだった区割り案、避けられない維新の求心力低下
2015年05月21日
こんなさばさばした顔を見たのは初めてかもしれない。
大阪都構想の住民投票で敗北が決まった5月17日夜、橋下徹大阪市長は吹っ切れたような笑顔で記者に向きあった。
「市長任期まではやりますが、それ以降は政治家をやりません」
きっぱりと、そして公約通り、政界引退を明言した。
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橋下氏はなぜ負けたのか。二つの理由をあげたい。
一つは、橋下氏のいう「二重行政の解消」は、大阪市を廃止しないと本当に実現できないことなのか。この問いに明確に答えられなかったことだ。
司令塔を一本化し、府と市の職員がいっしょに仕事できる体制をつくれば、むだがなくなり、大阪市の力をもっと発揮できる。この理念には一定の説得力がある。しかしそれは市を5つの特別区に分断することが必要条件なのか。市の住民説明会でもそこが多くの人の抱いた疑問点だった。
制度を変えてしまわなければ物事の根本は動かない。市長と知事が交代すればまた市と府で無意味な競い合いをする恐れがある――。橋下氏はそう説明したが、これでは市解体の理由として弱い。
政令指定都市は教職員の任免や児童相談所の設置などが独自にできるうえ、財源の確保でも一部で府県並みの権限が認められる。市の廃止はこれらの「特権」を捨てることを意味し、しかも二度と戻れないのだ。
大阪人は損得勘定に関してはことさら敏感だ。
協定書で示された区割り案は東西南北を単純に線引きし、無理やりこしらえた組み合わせのようだった。オフィス街や繁華街が集中する「北区」と、官庁街がある「中央区」は大企業も多く、豊富な税収が見込める。その一方、中小零細企業が多い「湾岸区」や南部の「南区」は、産業生産総額で5分の1以下にとどまり、切り離された感じが否め
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