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浅田真央の真意と「現役続行報道」(中)

彼女の帰還を待つ凄まじさ

青嶋ひろの フリーライター

 それにしても日本のメディアは、なぜこうも単純な、わかりやすい報道を好むのだろう。

 「来シーズンは集大成になる」

「ソチ五輪で集大成」引退表明会見 201304拡大2013年は浅田真央が「来年のソチ五輪で集大成」と発言したところ、多くのメディアから「引退表明」と受け止められた
 2年前もそう言っただけで、次の日には「浅田、来季引退」という文字が紙面を踊った。

 結局、彼女は次のシーズンで選手をやめはしなかったのに(この時は、「引退ということですか?」「今はそのつもりです」のやり取りがあった。しかしいささか強引な持っていき方であったことは否めない)。

 今年も記者会見の前、スポーツ紙などは「引退か、続行か」、そのどちらかをはっきり打ち出すことにこだわっていたようだ。

 「現役続行を視野に入れて練習中」では玉虫色で、ニュース価値が落ちてしまう、と(だから第一報がスポーツ紙ではなく、通信社だったのだ)。どちらかで大きく勝負することに意味がある、と。

 第一報が出てからも「現役続行」と決めてかかって報じるメディア、語るコメンテーターが多かったが、浅田本人が、ブログでも会見でも「今は道半ばなので、試合に出ますと断言することは出来ません」とはっきり表明した後も、その状況は変わらなかった。

 ニュースの見出しを見れば、「『100%復帰』決意」「現役続行を宣言」などとある。

 ブログでも会見でも、浅田は何も宣言などしていない。

 本当に試合に出るかどうかはこの後改めて決めるのであり、今回は「練習を始めている」と報告したに過ぎない。「100%」は彼女の復帰する確率ではなく、彼女が「試合に出たい気持ち」が100%になった、という話のはずだ。

 実は会見中から早くも、「現役続行を決めるにあたって真央さんは……」という形で質問が出てしまうので、彼女は何度も「まだ何が起こるかわからない。試合に出られない可能性はあります」と繰り返したほど。

 試合に出る、と決まったわけでも、必ず戻ると決めたわけでもない。ただ戻りたい気持ちで、戻れるコンディションを作るために練習を始めた、がんばっている、という状況。

 頑固な彼女のことだ、こうと決めたからには必死で滑り、シーズンに間に合わせてはくるだろう。

 でも、彼女の言う通り「何があるかはわからない」。もし彼女が「やっぱり試合は無理だな」「選手に戻るのは難しいな」と思ってしまったとき、その意志を表明しにくいような状況にならなければいいのだが。

 思い出すのは

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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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