アドバイスは、様々な人からあったという。外野がこれだけ大騒ぎしていたのだ。本人の周囲は大変なものだっただろう。
「ファンのみなさんからのお手紙、声……本当にたくさんの方から応援していただきました。なかには、『まだできるよ!』という意見もあれば、『もういいんじゃないの?』という声もあったんです」
熱心なファンからの声も大きい。
会見でも、様々な質問が飛んだ。
浅田真央にゆかりのある人物に取材をしている者は、その人の影響が大きかったのではないか、と問うた。被災地訪問を取材している者は、その経験も何がしかのきっかけになったのではないか、と聞く。
「**の声が動かした!」とわかりやすく報道するために、「現役続行の理由」を決めてかかりたいようにも見える。
また浅田に選手を続けさせたい人、彼女が戻ってくれば困る人。様々な大人の事情もあるだろう。
彼女ほどになれば、自分の意志だけでは決められないほど、その決断の波紋は大きい。
「何か裏があるんですか? 強い力が動いたとか、復帰しなければならない事情があったとか……」
そんなふうに勘ぐる人々もいる。それはもちろん、彼女が「復帰すれば、即世界チャンピオン」という強さを誇っているわけではないからだろう。

「大人な滑りができればいいな」と語った浅田真央
しかしこの日の会見でわかった一番大事なことは、浅田真央は「試合に出たい、そのために練習する」と自分自身で決めたことだ。
「自然と試合が恋しくなり、良い演技をしたときの達成感をまた感じたいな、と思うようになりました」
「できるんじゃないかな、できないんじゃないかな……を繰り返してきたけれど、今は100%復帰したい気持ちでやっています」
まわりがどれだけかしましくても、自分の気持ちを何よりも大事にした。自分自身が「やりたい!」という思い、その気持ちに従って、動き始めた。
そしてその気持ちを、大きな会場に集う人々の前、あそこまではっきりと言い切った。その言葉が、この日彼女が発した一番美しい言葉だった。
もう、外野が何を言おうと関係ない。浅田真央の「試合に戻りたい」、その気持ちがすべてだ。
裏事情を探りたがる人はいるが、「自分で決めた」「自分の気持ちがなにより大きかった」。それは真実だと思う。それほど浅田真央は、芯の強いアスリートだ。
「自分の立てた目標」という力
浅田真央のアスリートとしての最大の武器は何か?
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