メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ベライゾンがAOL買収、の日本における意味

「報道は国内の誰が支えても大丈夫」を広めるべし

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

次世代高速通信「LTE」の整備で先行する米携帯電話首位「ベライゾン・ワイヤレス」の店舗=2014年、ニューヨーク拡大次世代高速通信「LTE」の整備で先行する米携帯電話首位「ベライゾン・ワイヤレス」の店舗=2014年、ニューヨーク
 さる5月13日、米国発のニュースで、米国最大手の携帯電話事業者を傘下に持つ通信事業者ベライゾン(Verizon Communications)が、世界最大のインターネット接続サービス事業者(で今もあり続けている)AOLを44億ドルで買収した、と報道された。

 かつて2000年には複合メディア企業グループ・タイムワーナーと合併し2009年に再独立したAOLであったが、アナログ電話回線時代に世界を席巻したAOLの勢いは今はなく、インターネット接続サービス自体の競合企業ものみならず、ベライゾンも含めた通信メディア市場自体がすでに成熟段階に入っている市場環境の中で、この合併報道は驚きをもって受け止められている模様である。

 AOLという会社は現在、発展途上国や非都市地域など世界中のどこでも接続可能なインターネット接続が可能なサービス事業を今もそれなりの収益性で確保しているほか、テッククラン(TechCrunch:IT系経営者向けニュースサイト)、ハフィントンポスト(The Huffington Post:論説ブログと他社報道を主とするインターネット新聞)、エンガジェット(Engadget:電化製品等の専門雑誌風ブログ)、などの報道機関を含め、AOL.com(ポータルサイト。日本語版(www.aol.jp)やマップクエスト(MapQuest:細やかな沿道情報が入った地図検索サイト)といった広告収入運営の複数サイトを運営している。つまり、AOLは大規模な広告媒体会社であり、コンテンツ制作と広告営業を結びつける力を持った会社である。ベライゾンはこのコンテンツ編成力と広告営業力を買った
ことを意味する。

 ベライゾンは世界中のAOLインターネット接続会員約3000万人を手に入れ、逆にAOLは携帯電話向け・家庭のテレビ向けの映像コンテンツ配信事業をベライゾンから引き受け運営するという。通信接続~会員事業はベライゾンに、コンテンツ~広告事業はAOLに集約するということになるが、これが恒久的な措置なのか、AOLタイムワーナーのようになるのかはわからない。

 こうしたメディア業界内の合従連衡は、株式市場を除けば冷静に見るべき性質のものだろう。既存プレイヤーが十分に成熟し、グーグルやアップルすらも成長の見込みにくい市場の寡占化を広めているだけと言ってよい世界のメディアビジネスにおいて、とくにAOLタイムワーナーの一部始終を見てしまった2015年の日本のメディアビジネス関係者(除、ソフトバンク関係者)にはインパクトの薄い情報ではあるが、一つ、このニュースから日本のメディアビジネスが得られるヒントがある。それは、米国側で語られる危機感「報道機関を買い取る回線事業者は報道の中立性を保てないのではないか。

 傘下の報道機関は報道統制を受けるのではないか」(例えば米Gizmodo=IT関連専門雑誌風ブログサイト=のMario Aguliar氏2015年5月12日記事)という論旨の裏返しである。

 この記者の心配は杞憂だ。米国メディア複合企業のほぼすべてには、すでに携帯電話を除く通信・放送回線+新聞雑誌を含む報道機関+広告収入、という構造が存在している。携帯電話事業についても米国で実質的に寡占状態を作っているベライゾン、AT&T、スプリント(ソフトバンク傘下)の3社についてもそうなるのは必然で、

・・・ログインして読む
(残り:約952文字/本文:約2360文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

倉沢鉄也の記事

もっと見る