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電王戦から考察する、自動運転車の限界と可能性

現在のグーグルカーでは、出合い頭の衝突やカーブの先の障害物に対処できない

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 自動運転車の実現が現実的になってきた中、あえて突飛な話題からアプローチしてみる。

 この数年、オジサン趣味の世界のみならずニコニコ生放送に取り扱われて若者にも注目されてきた将棋ソフト対プロ棋士の団体戦「電王戦」は、第4回となった2015年3~4月の5番勝負で初めて人間が3勝2敗で勝ち越した。2012年以来3回負け続けたプロ棋士は対戦するソフトの研究に取り組み、ソフトの癖や欠陥を見抜き、過去の棋譜(対戦記録)にない手の連続、人対人では決して指さない奇抜な手、人対人では弱点を露呈してしまう手をあえて指すことによってソフトを混乱に陥れ、勝ちを収めることに成功した。

  もちろん負けたソフト側もその方法では二度と負けないように改善されてくるし、プロ棋士も新たな弱点を見つけて攻めることになる。間もなくチェスのように人がソフトに勝てない時代が来るだろう。そのこと自体の是非は論じない。人間とソフトの両方が進歩していくことは確かだろう。

ハンドルもペダルもついていないグーグルの自動運転車の試作車=グーグル提供拡大ハンドルもペダルもついていないグーグルの自動運転車の試作車=グーグル提供
 これが自動運転車とどう関係あるのか。機械に対する人のあらゆる思考と行動は、プロ棋士のように究極の専門家として考え抜いて裏をかいたものもあれば、まったくの素人が偶然行ってしまって機械の裏をかいてしまうものもある。これをたとえば自動車事故の原因となる運転手側、道路にいる人側、の行動に読み替えると、通常の事故の原因になっているような‘過失’もあれば、わずかながら俗に当たり屋(損害賠償および保険金目的詐欺)と呼ばれるような‘故意’のケースもあり、この‘故意’や‘信じられない過失’の責任を、ソフトウェアを作った側が負わずに済ませることは難しい。

 ソフトウェアというものはそうした問題点を改善してバージョンアップしていけばよい、という物言いは将棋でなら可能でも、現実に完成された姿が必要な自動車交通で制御ソフトウェアのミスは許されない。だからこそ自動車の各部品を制御するソフトウェアは

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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