樫村愛子(かしむら・あいこ) 愛知大学教授(社会学)
愛知大学文学部社会学コース教授。1958年、京都生まれ。東大大学院人文社会系研究科単位取得退学。2008年から現職。専門はラカン派精神分析理論による現代社会分析・文化分析(社会学/精神分析)。著書に『臨床社会学ならこう考える』『ネオリベラリズムの精神分析』、共著に『リスク化する日本社会』『現代人の社会学・入門』『歴史としての3・11』『ネオリベ現代生活批判序説』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
侵略国と被侵略国の人々が歴史に向き合う機会を設けるNPOブリッジ・フォー・ピース
アウシュヴィッツ博物館初の外国人ガイドとして現地在住の中谷剛さんは、著書で、ポーランドと世界の若者が交流するためにアウシュビィッツに建てられた「国際青少年交流の家」について言及している。かつての侵略国と被侵略国としてのわだかまりや傷をもつポーランドとドイツが歴史認識を共有化しようと努力する姿、ユダヤ人の殺害に加担した自らの父親の事件に真摯に向き合おうとするごく普通のポーランド人の姿など、草の根で若い人たちが過去の歴史に向き合おうとする姿が描かれている。
アウシュヴィッツを訪れる日本人は年々増えているという。また、証言者の高齢化を反映し、今年は最後の大きなメモリアルイヤーだとされているという(http://www.huffingtonpost.jp/ibuki-saori/post_9105_b_6738410.html)。中谷さんがガイドをしていることは日本人にとっては大きな財産である。ミュージアムショップでも、圧倒的にドイツ語の書籍が多い中、中谷さんが翻訳を手がけたものが日本語として並んでいるのはとてもありがたいだろう。
私がアウシュヴィッツを訪れて申し込んだときは、中谷さんは団体予約でふさがっていて、代わりに日本語を話すポーランドの学生さんがガイドしてくれた。彼女は中谷さんの知り合いで、「国際青少年交流の家」の活動に参加していた。メンバーには、祖母がユダヤ人で収容所にいた人もいるとのことだった。
日本がアジアと戦争中取り持った関係を考えると、絶対に必要なこういった活動を、いったい日本でやれる時が来るのだろうかと思っていた。
でも、日本で一歩を踏み出し、その活動を着々と積み重ねている人がいることを知った。NPOブリッジ・フォー・ピースを立ち上げた、神直子さんだ。フィリピンの被害者と、元日本兵の証言をビデオメッセージでつないでいる。マニラ市街戦でゲリラと市民が混同されて10万人の死者を出した歴史を
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