久田将義(ひさだ・まさよし) TABLO編集長
TABLO編集長。1967年、東京都生まれ。法政大社会学部卒業後、産経メディックスに入社。三才ブックス、ワニマガジン社の後、ミリオン出版に移籍し2001年から「実話ナックルズ」編集長。06年に選択出版に移り、週刊朝日を経てミリオン出版に復帰。12年9月まで編集局次長。犯罪や芸能界に詳しい。著書に『トラブルなう』『原発アウトロー青春白書』『僕たちの時代』(青木理氏との共著)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
新国立競技場の建設に伴う改築で、選手と観客の距離感が失われないか
昭和から平成にかけての冬の名物の一つにラグビーが挙げられる。特に、昭和当時は早稲田大学対明治大学、いわゆる早明戦は国立競技場を満員にしていたものだ。従って、席を取るのも大変だった。僕は当時明治大学の付属のラグビー部に所属していた。先輩たちの席を取るために、僕ら1年生は全員徹夜で並ばなければならなかったほどだ。
国立競技場は、客は秩父宮ラグビー場より入場者は多いものの、選手と客との距離が遠く、ラグビーをより身近で楽しみたいのなら秩父宮ラグビー場での観戦をお薦めする。肉体と肉体のぶつかりあいのタックルでは「ゴツッ」という音が聞こえたり、ラインアウトでは選手同士のサインのやり取りも耳に入ってくる。まさに、ラグビー用に作られた競技場だ。冬の寒さにこごえながら、毛布をひざかけにして観戦するのも、またおつなものである。
もっとも僕は選手の側だったので、観戦の醍醐味を知ったのはここ10年くらい前である。秩父宮ラグビー場の近くには国立競技場、神宮球場がある。そこから観戦帰り、夕陽に照らされた青山通りに向かう道は、銀杏並木が黄金色に輝いている。これも観戦の醍醐味だ。
2020年に東京オリンピックが開催される。この国家行事の為、都市の再開発が東京都内で行われている。最も有名なのは新宿・歌舞伎町のコマ劇場の取り壊しである。その代わり奇麗なホテルが建設され、「東洋一の歓楽街」「不夜城」と呼ばれた一種、いかがわしさのあった歌舞伎町に外国人観光客が目立つようになった。歌舞伎町観光地化計画とでも言おうか。繁華街はいかがわしさが、「味」となるものだが「味」も素っ気もない街になったとしたら、それはそれで街の形成において失敗ではないだろうか。
国立競技場周辺も、いよいよ開発が行われる。国立競技場の以外の大きな競技場と言うと、神奈川県・新横浜の日産スタジアム、東京都・調布付近の味の素スタジアムがある。が、両方とも都心から離れており