鉄道の利便性を失う持ち物検査の導入は困難、スプリンクラーにある危険性
2015年08月07日
国土交通省は今回の放火事件について、1964年の東海道新幹線開業以来初めての列車火災事故と認定した。放火された1号車の座席はアルミの骨組みがむき出しになり、天井パネルが落ちていたという。だが、車両全体が炎上することはなく、事件後には自走して三島の車両基地に入った。JR幹部は「結果として、国内の鉄道車両に課せられている厳しい防火対策が功を奏した」と話す。
106人が死亡した桜木町駅列車火災事故(1951年)や、30人が死亡した北陸トンネル列車火災事故(72年)をきっかけに、国内の鉄道は車両設計から燃えにくい車両づくりに取り組んできた。国交省やJR各社によると、新幹線は地下鉄と並んで最も厳しい技術基準が定められている。
車内の天井は火がつかない不燃性素材、シートや床の敷物は火が燃え広がらない難燃性素材を使用。放火により約200人が死亡した2003年の韓国・大邱市の地下鉄火災以後は放火対策も強化された。車両間の延焼防止に加え、消火器を全車両のデッキに備え、乗客がわかりやすいよう表示することになっている。
今回の事件をめぐっては、女性客が巻き添えで窒息死したことから、排煙設備やスプリンクラーの必要性を指摘する声もある。これに対し、JR各社は「燃えにくい車両づくりと乗客の避難誘導が安全対策の基本。排煙やスプリンクラーは、対策としてありえない」と口をそろえる。
ある新幹線技術者は「排煙のために車内の空気を入れかえれば、新たに酸素を供給してしまい
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください