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自信の最後の一片を埋めた錦織

苦手のナダルを破った光る攻撃力、不安材料はけがと疲労

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 錦織圭選手は、昨年準優勝した全米オープンテニス(8月31日~9月13日、ニューヨーク)で、再び四大大会制覇の夢をかけることになる。

ウィンブルドン選手権2回戦の前、練習で調整する錦織=2015年7月1日、ロンドン郊外のオールイングランド・クラブウィンブルドン選手権2回戦の前、練習で調整する錦織=2015年7月1日、ロンドン郊外のオールイングランド・クラブ
 モントリオール大会を準決勝で敗退(8月13日)したのち、全米オープン出場を目指して臀部の怪我を治す目的で8月17日からのシンシナティ大会を欠場するにあたり、「これまでの古傷ではないので軽いと思う」と本人はコメントしている。しかし数年前から筆者が指摘している通り、他のトップ選手たちと比べて小柄で華奢な体格の錦織にとって、次に古傷(腹筋、手首、足首、今年痛めたふくらはぎなど)を痛めたらそこがキャリアの下り坂のスタートと言わざるを得ない。臀部という体全体を支える筋肉の怪我は、必ず異なる箇所への無理を生じさせる。そうした怪我を克服する筋力強化の結果が現在の活躍でもあるが、すでに6月末の全英オープンを怪我(ふくらはぎ痛)で途中棄権し、その復帰直後の怪我だけに大事に至らないことを願うしかない。

 少なくとも言えることは、8月24日時点のシングルス世界ランキングで4位、第4シードとなった錦織にとって、1位ジョコビッチ選手(セルビア)、2位フェデラー選手(スイス)、3位マリー選手(英国)とは準決勝まで対戦しないことを意味しており、たとえ過去0勝のガスケ選手(12位、フランス)、また過去1勝のナダル選手(8位、スペイン)やバブリンカ選手(5位、スイス)であっても、錦織は現時点の上位ランカーとして試合に臨むことができる。プロのテニストーナメントにおいて、第4シードか第5シードか、第8シードか第9シードか、第16シードか第17シードか、は大きな境目である。

 全米オープンのトーナメントドローは日本時間の28日午前に発表されるが、第4シードが準決勝までの勝ち上がりを気にかける意味は正直薄い。問題は準決勝、決勝をどう勝つか、せいぜい準々決勝の相手が誰になるかであり、

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