国民年金では足りない老後の備え、貧しさから身を守るのは福祉ではなく教育
2015年09月04日
サラリーマンが性に合わなかった父はずっと歩合制の仕事ばかりしていたため、ボーナスなんてものは手にしたことはない。もちろん保険は国民健康保険、年金は国民年金だった。国民年金の受給額の低さがニュースになるたびに思うことがある。56歳で亡くなった父が高齢と呼ばれる年齢まで生きていたとして年金を満額受給しても約6万4000円。しかも未納や免除期間もあり、さらに減額となることは確実だった。
様々な生活費の他に、持ち家でなければ賃貸が必要となり、国民年金(老齢基礎年金)だけで理想とする老後を送ることは出来なかっただろう。日本人の8割以上の人が年金だけで生活しようと考えているという調査結果があるが、国民年金だけに加入している人は自覚しなければならないことがある。そもそも国民年金(老齢基礎年金)だけでは老後の備えは絶対的に足りないということだ。
今年6月に起きた71歳の男性が年金に不満を持ち新幹線で焼身自殺した事件は衝撃だった。仕事を選ばずに身を粉にして一生懸命に働いていた父と重なった。飲みに行くのも年に一度あるかないか、洋服も着た切りで贅沢は一切していなかった。それでも“どうにもならない”ことがあると父親の背中を見て私は育った。一度、落ちた貧困から抜け出すのは容易なことではない。働きたくても働けず年金だけで暮らす高齢者をとりまく状況は厳しい。
先日、都内の地域包括支援センターの方に話を聞いた。オレオレ詐欺被害、ゴミ屋敷化、孤独死・・・。“私は大丈夫”で片づけられない身近で起きている現実だという。
知り合いの70代の女性も嫁姑の問題からやむを得ず一人暮らしを強いられることになった。病気がちだったご主人はすでに亡くなっていてわずかな遺族年金だけで生活することに。「この年齢で本当に情けない」と涙を流していた。
持ち家でなく子供からの援助もあてにならない高齢者の貧困化はこれからますます大きな問題になる。最低限のセーフティーネットとして低家賃で安心して暮らせる住宅、そして安否確認をしてくれる第三者の確保が先決である。
貧困という落とし穴は突然牙を剥くのではない。老いも若きも
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