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日本代表チームの選手と監督の心地よい距離感とは

監督の求めに忠実に取り組んだ選手たち、ピッチの中でもっと感じよ

潮智史 朝日新聞編集委員

カンボジア戦後半、ゴールを決める吉田(右奥)
=2015年9月3日、埼玉スタジアム拡大カンボジア戦後半、ゴールを決める吉田(右奥) =2015年9月3日、埼玉スタジアム
 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会のアジア2次予選で、日本代表チームが初白星を挙げた。

 埼玉スタジアムであった3日のカンボジア戦で最優先されるべき勝利は手にした。しかし、試合後の選手たちの反応はネガティブなものだった。

 34本のシュートを放ちながら3得点。主将の長谷部誠は「チャンスの数からいけば、3点では満足できない」と表情を曇らせた。圧倒的な力の差があった格下相手に乏しい内容。6月の2次予選初戦で無得点のまま引き分けたシンガポール戦で立ちこめた不安を払拭することはできなかった。

 カンボジアはFWを含めた全員が自陣に引きこもった。どんなに攻められようと、失点しようと、ボクシングでいえば、パンチを繰り出すことなく、ひたすら顔の前(ゴール前)でガードを固めたような戦い方だった。

 日本にすれば、先制点が取れた時点で勝利はほぼ確約されていた。まるでスパーリングパートナー相手に決定打をどう打ち込むかを練習するような試合だった。

 ゴール欠乏症という課題に対して、選手たちはよくやったと思う。直前の合宿では、守りを固めた相手をどう崩してシュートを放つかに時間を割いていた。ハリルホジッチ監督が授けた具体的な打開策に忠実に取り組んだ結果が3ゴールにつながったことは間違いない。

 しかし、気になるのは、この監督の求めに忠実に取り組んだ点である。

 本田圭佑と酒井宏樹が組んだ右サイドを中心に、前半は左右からのサイドアタックを多用してチャンスを作り続けた。辛抱強く、しつこく両サイドを崩すことに力を注いだ分、攻撃は多様性を失い、リズムは単調になっている。

 それを象徴していたのは攻撃をリードした本田だった。ときにひとりで持ち込んでシュートやラストパスを送る強引なプレーは、これまでもチームのアクセントになっていた。この日はそんなプレーを控え、献身的な動きに終始した。待望の先取点が、その本田のDFごと打ち破るような強引なミドルシュートから生まれたことは皮肉にも映った。

 1―0で折り返した後半は、サイドアタックを減らして、中央からのミドルシュートを狙った。その変化ははっきりとしていて、ハーフタイムにハリルホジッチ監督が指示したものだった。そして、吉田麻也のミドルシュートと、岡崎慎司のシュートから生まれたこぼれ球を香川真司が流し込むシュートで2点を加えた。

 サイドアタックを仕掛けた前半、ゴール前に送り込んだ大量のクロスはカンボジアにことごとく跳ね返された。それでも、 ・・・ログインして読む
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筆者

潮智史

潮智史(うしお・さとし) 朝日新聞編集委員

朝日新聞編集委員。1964年生まれ。87年入社。宇都宮支局、運動部、社会部、ヨーロッパ総局(ロンドン駐在)などを経て現職。サッカーを中心にテニス、ゴルフ、体操などを取材。サッカーW杯は米国、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカ、ブラジルと6大会続けて現地取材。五輪は00年シドニー、08年北京、12年ロンドンを担当。著書に『指揮官 岡田武史』『日本代表監督論』。

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