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3兄弟《灘→東大理Ⅲ》の佐藤ママ本は名著(上)

灘高の生徒が東大理Ⅲを目指すしかないのは社会構造のせい

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 3人の息子を灘高から東大理Ⅲに進学させた奈良の専業主婦、佐藤亮子氏(以下、佐藤ママ)が話題になっている。彼女の講演で語った「受験に恋愛は邪魔」「大学への願書は私が書いて清書させた」といった過保護な教育ママぶりが、炎上の対象となった。前半では、批判への違和感を言及し、後半では「放任主義で育てられるアメリカ型エリートは、日本では通用しない。過保護は結局正しい」ということを書いていきたい。

批判するのはママたちではなく、中高年の男性たち

  佐藤ママ炎上騒動が通常と違うのは、著名人やジャーナリストなども実名で違和感や批判をコメントしているの点だ。

 「大学受験前は恋愛禁止」というのは、予備校や家庭教師の先生たちは何千回も繰り返し言ってきていることで、それをなぜ佐藤ママが発言するとみな過剰に反応するのか。

 批判の内容をみると、ポイントは「教育ママが自分の見栄のために、子供を支配し勉強させ、東大理Ⅲに入学させた。子供は親の所有物ではない」ということであり、また、「子供を東大理Ⅲに入れたからって、ただの主婦が自慢げに本を出したり、講演をしているのはどうなのか」というニュアンスの反発もある。

  ネット以外でも子育ての話題は諍いの元になりやすい。ママ友同士や嫁姑が揉めるのも、子育てへの考え方の違いが原因ということがしばしある。その理由を、ある東京都大田区のママは「子育ては信仰だから」と述べていた。だが、佐藤ママへの批判は本来子育て論争の主役であるママたちではなく、どちらかというと学歴の話題好きの中高年の男性たちが主体となっているように感じられる。彼らの多くは佐藤ママの『受験は母親が9割』(朝日新聞出版)も読んでいないだろう。

地方の秀才は医学部を目指すしかない

  佐藤ママの希望で3兄弟が理Ⅲに進んだという発想をする人は地方というものを分かっていない。
長男は「ネットでは僕達がまるで操り人形であるかのように思われていますが、心外です。」と公に反論もしている。彼は母親の著作の中で「手に職をつけようと思って医学部を志望した」という主旨のコメントもしている。

  彼や弟たちが理Ⅲを目指すのは現在の社会構造からして当然の流れなのだ。

  地方は職業の選択の幅がないので、一定以上の学力がある子たちは、医学部や薬学部といった医療系の専門職を希望する。弁護士は

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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