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マイナンバーシステム汚職の影響(上)

官の大規模ITは業者と一体の構築運営が必須

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

マイナンバー収賄事件で厚生労働省に捜索に入る警視庁の捜査員=2015年10月14日、東京・霞が関拡大マイナンバー収賄事件で厚生労働省に捜索に入る警視庁の捜査員=2015年10月14日、東京・霞が関
 10月に起きたマイナンバーのITシステムをめぐる厚生労働省職員の収賄容疑逮捕のニュースは、マイナンバー導入の社会的な合意になんとなく棹を差すとともに、国家的導入のインフラ整備に対してまたも業者との癒着か、という報道を引き出す形となった。マイナンバー導入自体は国会の多数決で法定されている(しかも法制化過程には民主党と自民党の両政権が含まれる)ことなので論じる余地はなく、また収賄贈賄は犯罪なのでこれも論じる余地はない。マイナンバーのITシステム自体についてもここでは論じない。

 この種の報道で最も危険に感じたのは「この厚労省職員は‥本来は国が準備する仕様書を、受注を望んでいた同社に作らせていた」(朝日新聞10月13日ほか多数の報道)という事実が、「発注にかかわった‥契約で業者選定に権限を持っていた」「見返りとして‥現金を受け取った」という文面でいっしょくたに報道されている点である。

 「選定権限を持つ担当官がITシステムの発注仕様書を民間企業に書かせた」を官民の癒着は悪、仕様書は民間の人間を介さずに書くべきだ、と見るように社会の雰囲気を醸成しているのなら、この報道表現は断じて撤回されなければならない。

 結論を先に言う。ITシステムとくに大規模なものを政府自治体自体が発注するにあたり、発注仕様書は、「ITを道具として行う、その業務の内容を熟知した民間企業の人間」が書かねばならない。官の人間自身で発注仕様書を書ききることは、無理だ。システムの不具合を生み、税金の無駄を生む。

 ITシステムの技術は日進月歩で、大規模になるほど複雑化し、不具合収束の時間とコストもかかる。失敗は許されない。しかし頻繁に異動する役人がその技術的知見を常に持っておくことは事実上不可能だ。今回逮捕された職員のように

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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