少年Aは完治していないものの再犯しない適応力つけた一応の成功例、理想は改心だが…
2015年10月28日
また、報道機関の「騒ぎすぎ」は、少年Aという特異な例から、少年犯罪者の更生全体についての誤った印象を国民に抱かせるという大きな弊害を招いている。現在日本の少年犯罪の更生の全体がどうなっているかということこそ重大なテーマである。順序としてこちらから論じたい。
少年犯罪自体の状況は、警察統計によれば、ここ10年で激減である。凶悪犯は半減以下、窃盗にいたっては3分の1近くにまで減っている。少年自体の数が減少していることを差し引いてもまれにみる激減傾向にある。
ところが、どの世論調査をみても、少年犯罪は凶悪化していると思っている人が圧倒的多数に上っている。確かに酷い事件はなくならないので、その幾つかを報道で見聞きすれば、状況が悪くなっていると感じて不思議はない。
しかし、実際は、20~30年前ならニュースにもならない事件が、大きく報道されている。犯罪報道の細部にウソはないのだが、その紙面の割き方が尋常ではない。確かに殺害された人と家族にとってはこれ以上ない重大事件であるが、そこまでの紙面を割く必要があるとは思えない。
少なくとも、少年犯罪全体は減少していることを示して、国民の勘違いをさけるべく慎重に報道しなければ「真実」は伝わらない。その点、マスコミ報道は大きな過ちを犯しており、直ちに検証記事を出すべきである。
それに、そもそも少年犯罪にとって大切なことは、凶悪化や数の増減ではない。少年を更生できるかどうかが、最も注目すべき点である。日本社会は、先進国の中でも、他国と比較にならないほど犯罪が少ない社会であることは、さすがに多くの人が認識しているところであろう。日本の人口比の犯罪発生率は、何割か少ないレベルではなく桁が違う。
その原因は、非行少年が、ほとんど更生するからであり、この部分こそ、日本社会が世界に誇れる部分である。犯罪白書の3-1-1-3図非行少年率の推移は、ある年に生まれた少年が何歳の時に人口比で何人検挙されたかをグラフ化しているが、12歳から検挙される者が出始め15歳から16歳でピークをつけている。重要なのはその後で、17歳、18歳、19歳と大きな傾斜で人口比での検挙数は減少する。19歳では、ピーク時の約5分の1になる。
このことは15歳・16歳で検挙されていた少年の8割以上が19歳では検挙されなくなっていることを意味する。新たに非行に走る少年もいることから、実際は、一度検挙された少年の9割近くが、検挙されていない。見事な更生の成功である。諸外国では、少年期に非行に走り、大人になって本格的な犯罪者になることがパターン化している。
治安が良い日本社会を支えてきたのは、この非行少年の更生の成功なのである。報道記者は、勉強不足で、警察で取材したことを垂れ流すことによって国民に大きな誤解を与えていることを猛省すべきである。
さて懸案の少年Aのことだが、ここまで述べてきた更生の意味付けに注目してほしい。諸外国と比較して、一般論として少年の更生は稀にみる大成功を収めていると言う時の更生の意味は、あくまで再犯の阻止である。より正確には、
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