中国による日本人「スパイ」4人の逮捕が物語るひと昔前の牧歌的な時代からの変化
2015年11月11日
4人の邦人“スパイ”が中国当局に拘束されていることが判明してから、1カ月以上が経っている。
そして翌6月、今度は札幌市在住の69歳男性が北京市内で拘束。元大手航空会社勤務で、退職後は北海道で牧場を経営するかたわら、日中間の人材派遣の公益団体を立ち上げていた。さらに同月、東京在住の日本語学校幹部の50代の女性が上海で拘束される。彼女は中国出身で、日本国籍を取得していた。
捜査関係者によると、うち3人は過去に公安調査庁と接触していた形跡が確認されている。公安調査庁(公庁)は公安警察と違って捜査権を持たないため、外部に協力者を作り、調査を行う。彼らが公庁の協力者だった可能性が指摘されているのだ。しかし、なぜわずか2カ月の間に、バラバラの場所で、4人が拘束されたのか。
「彼らが横の連携を取っていた形跡はない。中国からのサイバー攻撃によって、政府のデータベースから情報を抜き取られている、あるいは公庁内部に『国家安全部』の協力者がいる可能性などが指摘されている」(全国紙記者)
4人を拘束したのは、いずれも中国の情報機関「国家安全部」。しかし、疑問が残る点もある。一部の大手新聞は盛んに4人を「スパイ」と報じているが、拘束された邦人の一部と公庁との接点は確認されているものの、今回4人はいずれも立ち入り禁止区域や軍の施設に侵入したわけではない。今回の行動が「スパイ活動」を目的としていたかどうか、実はわからないのだ。
今年7月、中国の全国人民代表大会で「新国家安全法」が採択された。これは、活動家や外国人の監視を強化するものだ。中国共産党が自らの権勢を誇るために、スパイ疑惑を捏造したり、誇張することは常套手段である。
「5~6月という短期間に4人が拘束されたのは、当局が“取り締まり強化月間”の指示を出していた可能性がある」(前出・記者)
しかし、事態は予断を許さない。一部報道では4人のうちの1人が「電極拷問を
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