山口小夜子、ファッション……個人クリエイターの情熱がカッコ良さを生んだ時代
2015年11月25日
昨年11月、乃木坂の小さなスペースで、ある写真展が開催された。『70’s 原風景 原宿』と名づけられた展覧会では、原宿を中心にした70年代のモノクロ写真が壁面を飾り、当時をよく知る人から20代の若者まで、連日多くの人たちで賑わった。この写真展の主催者は、スタイリストの中村のん。当時原宿で青春時代を過ごした彼女だが、写真展を開催するのはこれが初めてだったという。場所を押さえ、知り合いの写真家に声をかけ、トークショーを企画して出演を掛け合い……と、すべてを「自分の文脈から」つまり、自身の友人や知人をつたって立ち上げていったものだった。
それから約1年、自体は思わぬ方向へと進んでいた。この写真展を見に来た藤原ヒロシがラジオで出版化を呼びかけたことに端を発し、『70’HARAJUKU』という写真集になったのだ。中村のんは、今や70年代とはどんな時代だったか、という語り部として数々のトークショーに出演を請われるようになった。
70年代は今、密かなブームとなっている。マガジンハウスが発行する『GINZA』で70年代の特集が組まれたのが2015年3月号。8月〜9月半ばまでは、横浜の赤レンガ倉庫で『70’s バイブレーション 横浜』というカルチャーイベントが行われ、佐野元春、ピーター・バラカン、片岡義男や田中康夫などが登場した。イベントを冠とした雑誌『スイッチ』の別冊も出版。他にも数多くの雑誌が70年代を取り上げている。
ファッション、音楽、写真、そして映画……なぜ今、これほどまでに70年代が注目を集め、70年代を表現しようとするクリエイターが多いのか。
ビートルズ解散、大阪万博、三島由紀夫割腹自殺で幕開けした70年代は、
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