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電車で「痴漢冤罪」に巻き込まれないために(下)

混んだ車両では女性の後ろに立つな、捕まりそうになったら名刺を渡しその場を立ち去れ

瀬木比呂志 明治大法科大学院教授

 普通の男性にとって巻き込まれる可能性の最も高い冤罪が痴漢冤罪であることは、おそらく間違いがない。そこで、これに対する防衛策について具体的に語ることにしよう。

JR埼京線に設けられた女性専用車両には多くの女性が列を作った=2012年10月、さいたま市のJR中浦和駅拡大JR埼京線に設けられた女性専用車両には多くの女性が列を作った=2012年10月、さいたま市のJR中浦和駅
 痴漢冤罪には二つのパターンがある。まず、数はわずかだがきわめて恐ろしいものであるフレームアップ(でっち上げ)型について説明しよう。

 これは、集団による暴力を伴うスリ(2人以上が押さえ付けている間にもう1人が財布等を取る。つまり、実質は強盗ともいえる)などと同じく、集団で痴漢冤罪を作り出すものである。女性を含む何人かのグループでターゲットを取り囲み、女性が痴漢を訴え、その後、面識のない他人を装った男たちがターゲットをつかまえ、引っ立てる。そして、恐怖に震えるターゲット(被害者)を「じゃあお金で解決しますか?」と脅すわけだ。

  被害者は、動転しているから、痴漢冤罪が仕組まれたことにすら気付かないことが多い。また、それが仕組まれたものだとわかっても、立証することは容易ではない。悪いやつらは、そうした点の工作には長けているからである。

  このように、目的はほとんどの場合金銭だが、さらに恐ろしいのは、これが、ターゲットの社会的地位に致命傷を与えるために使われる場合がありうることだ。そのような事態をもくろむ人間や組織に依頼されたグループが、さらに精妙な作戦を仕掛けることになる。闇に葬られてしまうので、その実態はよくわからないが、こうしたケースも実際に存在するといわれている。

 第一の型の痴漢冤罪に対する防衛策は、電車内では常に一定の注意力を保って周囲に気を付けていることである。日本人は、日常的な危険のほとんどない国の国民であるため、群衆の中でスキだらけであることがきわめて多い。海外旅行でスリ、置き引きにあう日本人が後を絶たないのも、このことが一つの理由である(もう一つの理由は、現金や高価品を持っており、そのようなことを示す服装をしている場合が多いこと)。

 私自身、あるジャーナリストから、「瀬木さん。電車内で女性を含む怪しい集団に取り囲まれそうになったら、すぐに逃げないとだめですよ」と、忠告されたことがある。皆さんも、気を付けてくださいね。

 第二の型は、ごく普通の痴漢冤罪である。これに対する防衛策については箇条書きにしておこう。

 ①混んでいる車両では、できる限り女性の後ろに立たないこと。痴漢は、見付かっても女性の後ろにいる人に罪を着せられるように横から手を出すことが多いからだ。ことに、真後ろで密着するような位置に立つのは最悪。

 ②なるべく吊革につかまり ・・・ログインして読む
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筆者

瀬木比呂志

瀬木比呂志(せぎ・ひろし) 明治大法科大学院教授

1954年名古屋市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。裁判官として東京地裁、最高裁などに勤務、アメリカ留学。並行して研究、執筆や学会報告を行う。2012年から現職。専攻は民事訴訟法。著書に『絶望の裁判所』『リベラルアーツの学び方』『民事訴訟の本質と諸相』など多数。15年、著書『ニッポンの裁判』で第2回城山三郎賞を受賞。

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