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[1]シーズン初戦、浅田真央はやはり特別だった

青嶋ひろの フリーライター

 1シーズンの休息を経て、試合の氷に帰って来た浅田真央を見て、なんだか最初は、幽霊を見ているような気分になったものだ。

 昨年(2014年)5月、現役続行か、否か、進退を問われた彼女は確かに、「できないな」と言った。

 ソチ五輪後の疲れ切ったような表情、また休息中のアイスショーで見せたいきいきした笑顔を見て、もう競技者としての浅田真央を見ることはないのだろう、と私も諦めていたのかもしれない。彼女自身だって、「もうこのまま引退してしまおう」と一度ならず思ったことがあるという。

復帰戦となったジャパンオープンで演技する浅田真央拡大復帰戦となったジャパンオープンで、シーズン初戦としては最高の演技を見せた浅田真央

 1年を経ての、復帰。

 言葉にすれば簡単だが、それがどれだけアスリートにとって過酷なことだったか。既に大きな実績を持つ彼女が、こうして試合に戻ってきたこと。それだけでも大変なことなのだ。

新しいトリプルアクセル

 10月初旬のジャパンオープン。

 まず、彼女の淡々とした練習風景に驚く。1年7カ月ぶりの試合の、公式練習。まわりが大騒ぎをしているのが馬鹿みたいに思えるほど、彼女は淡々と、いつも通り、昨日もこの場所にいたような顔をして滑っていた。

 しかし以前と違うのは、練習から嘘のように軽々跳んでしまったトリプルアクセル。しかもこれまでとは違う、無理のない自然なアクセル。あまりにも簡単に跳んでしまうので、角度によっては「2A(ダブルアクセル)じゃなかった?」と疑いたくなるほどだ。

新たな浅田真央はどこまで進化し続けるのか拡大新たな浅田真央はどこまで進化し続けるのか
 「真央選手のトリプルアクセル――跳ぶ前の助走のカーブや跳躍時の身体の向きが、きれいに修正されていましたね」

 と、国際ジャッジのひとりもその変化に唸った。

 「特に、テイクオフの姿勢。以前は前のめりになっていた上体が、今はまっすぐ向いている。自然な動きで跳べている分、ジャンプに高さも出ますし、高さが出ればアンダーローテ―ション(回転不足)もとられにくい」

 ジャンプの修正――。簡単に言ってしまいがちだが、既に身につけてしまった技術、その癖を直すことは、ほんとうに大変なことだという。

 「おそらく、新しくトリプルアクセルを身につけようとするよりも、3倍も4倍も難しいことなのです」

 そんな荒業を、シーズン初戦の公式練習、浅田真央はしれっとした顔でやってのけてしまったのだ。

 そして興味深かったのは、 ・・・ログインして読む
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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

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