安保法制を報じるシリーズ「時代の正体」が突きつける新聞の「公正」「不偏不党」
2015年12月21日
「ええ、偏っていますが、何か」
自分が購読している新聞に、安保法制に反対ばかりで「偏っている」と批判したところ、ホームページ上でこんな風に開き直られたらどう思うか。
記事はまず、こう始まる。
「偏っているという受け止めが考えやスタンスの差異からくるのなら、私とあなたは別人で、考えやスタンスが同じでない以上、私が書いた記事が偏って感じられても何ら不思議ではない。つまりすべての記事は誰かにとって偏っているということになる」
さらに安保法制をごり押しした安倍政権を「憲法という権力に対する縛りを為政者自らが振りほどき、意のままに振る舞うさまは暴走の2文字がふさわしかった」と批判する一方で、「私たちは何を見落とし、何を書き逃してきたのか。時代の正体なる大仰なるタイトルはその実、時代を見通す目を持ち得なかった自分たちのふがいなさの裏返しにほかならず」と、それを許したジャーナリズムの担い手である自身を嘆く。
異論を封じ込めようとする風潮に対して「民主主義の要諦は多様性にある。(中略)それぞれが違っているからこそよいという価値観が保たれていなければならない」と説き、最後は神奈川新聞記者として決意を込める。
「だから空気など読まない。忖度しない。おもねらない。孤立を恐れず、むしろ誇る。偏っているという批判に『ええ、偏っていますが、何か』と答える。そして、私が偏っていることが結果的に、あなたが誰かを偏っていると批判する権利を守ることになるんですよ、と言い添える」
地方紙とはいえ、メディア界のテーゼとも言える「公正」「不偏不党」に、ここまで切り込んだ新聞社が、かつてあっただろうか。私はなぜかショックに
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