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中央のDFとボランチが手薄なハリルジャパン

鮮烈な印象残した新戦力見当たらず、求められる選手の柔軟な対応力

潮智史 朝日新聞編集委員

W杯2次予選で引き分けたシンガポール戦の前半、ピッチ脇から大きな声を上げるハリルホジッチ監督=2015年6月16日、埼玉スタジアム拡大W杯2次予選で引き分けたシンガポール戦の前半、ピッチ脇から大きな声を上げるハリルホジッチ監督=2015年6月16日、埼玉スタジアム
 サッカーの日本代表チームにとって、2015年はじっとがまんする年だったといえそうだ。

 格下のチームがそろったワールドカップ(W杯)ロシア大会アジア2次予選を戦いながら、同時に若手を中心に新しい選手の掘り起こしに時間を費やした。「W杯への準備は4年の時間をかけて進めるものだ」と話すハリルホジッチ監督にすれば、鮮烈な印象を残した選手は見当たらなかったのではないか。

 3月に2試合を残すW杯2次予選を終えると、チームづくりは「第2段階に入る」と監督は明言している。9月から始まる最終予選に向けて、メンバーを試すような時間は限られるが、15年にまいた種がJリーグの新シーズンで芽を出してくれば、がまんの年だった15年の評価も変わってくる。

  15年は1月のアジアカップで幕を開けた。八百長疑惑がいわれたアギーレ前監督の下、決勝トーナメントには進んだが、アラブ首長国連邦にPK戦の末に敗退。その後、日本サッカー協会はアギーレ監督との契約を解除した。契約上の問題や監督から訴訟を起こされる可能性など難しい状況にあったことは理解できるが、W杯予選を前にアジアのライバルたちや戦い方を知る機会を新監督が失ってしまったのは、その後に大きな影を落とすことになった。

  ハリルホジッチ監督に代わってからは、国際親善試合で3勝1分け、W杯2次予選5勝1分け、東アジアカップ1敗2分け。最も結果が重視される2次予選では、初戦のシンガポール相手に堅守を崩せずに無得点に終わる引き分けとなったが、その後は5戦すべてに勝って首位に立った。

  2016年に目を向けると、待たれるのはやはりチームに刺激をもたらす新戦力に台頭になる。

  ハリルホジッチ監督就任以降の8勝1敗4分けを見ても、欧州でプレーする海外組を脅かすほどの新戦力は出てこなかった。特にJリーグでプレーする国内組からは選手を入れ替えながらチームに加えられたが、継続して力を示す選手は見当たらなかった。それは国内組で臨んだ東アジアカップで北朝鮮、韓国、中国相手に1勝もできなかったことが物語っている。

  なかでも、手薄な中央のDFとボランチ(下がり目のMF)にはどんな試合でも安定したプレーを出せる選手の台頭が必要だ。

  2016年は3月にW杯2次予選を終えると、6月にキリンカップ(国際親善試合)を挟んで9月、10月、11月とW杯最終予選が続く。チームとしては、2次予選で強いられた忍耐強い試合運びが続くと予想する。

  アジアカップをはじめ、15年の日本はアジアでそれほど恐れる相手ではないという印象をライバル国に与えてしまった。

  ボールを持たせてゴール前さえ固めておけばゴールを奪う力はない。すばやいカウンター攻撃とセットプレーからチャンスは十分に作れる。最終予選で待ち構える対戦国の胸の内を想像すると、こんなところだろう。

  さらに、韓国やイラン、オーストラリアといった実力の高い相手は守備を固めるまでもなく

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筆者

潮智史

潮智史(うしお・さとし) 朝日新聞編集委員

朝日新聞編集委員。1964年生まれ。87年入社。宇都宮支局、運動部、社会部、ヨーロッパ総局(ロンドン駐在)などを経て現職。サッカーを中心にテニス、ゴルフ、体操などを取材。サッカーW杯は米国、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカ、ブラジルと6大会続けて現地取材。五輪は00年シドニー、08年北京、12年ロンドンを担当。著書に『指揮官 岡田武史』『日本代表監督論』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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