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[4]羽生結弦がフィギュアスケートを変貌させる

青嶋ひろの フリーライター

羽生結弦が見せた「祝祭性」

 NHK杯における羽生結弦の「SEIMEI」。これは、ショートプログラムの彼に足りない、と思ったもの、これから期待したい「アートとしてのフィギュアスケート」ではなかったかもしれない。

 それでもこれはまちがいなく、フィギュアスケートが見せられる「一番凄いもの」のひとつだった。

 かつてある評論家が、「祝祭性」という言葉でこのスポーツを語ったことがある。

 それは、2007年世界チャンピオン、ブライアン・ジュベール(フランス)の魅力を言い表したもの。

ブライアン・ジュベール選手2007年の世界選手権で優勝したブライアン・ジュベール(フランス)
 ジュベールは、踊りが達者なわけではない。演技が巧みなわけでもない。

 しかし持ち前の豪快なジャンプを成功した彼はノリにノって、拙くとも迫力たっぷりのステップで、愛嬌たっぷりの仕草で、これでもかと観客を盛りあげるのだ。

 そこにあるのは芸術性ではなく、有無を言わさぬ「祝祭性」。祭りのただなか、人々が異様な興奮、高揚感に包まれる、その空気だというのだ。

 もちろんNHK杯フリーの羽生は、単純なお祭り騒ぎをつくっただけではない。

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