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上野千鶴子氏の一番弟子が語る小保方氏手記(上)

STAP細胞問題をジェンダーの視点で読む

杉浦由美子 ノンフィクションライター

STAP細胞についての記者会見の会場に入る小保方晴子氏=2014年4月9日、大阪市北区拡大STAP細胞についての記者会見の会場に入る小保方晴子氏=2014年4月9日、大阪市北区
 STAP細胞論文捏造騒動で渦中の人物であった元理研研究員・小保方晴子氏。彼女がこのたび手記『あの日』(講談社)を出版し、ベストセラーになっている。博士号を取り消され、研究者としては道を閉ざされた彼女だが、この手記によってまた注目されている。そこで、今回は、この一連の”小保方晴子”騒動をジェンダーの専門家はどう見るのか。千田有紀・武蔵大学教授に話を聞いた。千田氏は上野千鶴子氏の一番弟子で、理論派の社会学者として知られる。

苦労話は「若山先生にケーキを作ったこと」だけ

 (杉浦)今回の小保方さんの手記は読まれていかがでしたか?

 (千田)面白く読みました。研究を分かっていない人の視点からみた「研究者像」ってこうなんだろうなあと。テレビドラマに出てくるお医者さん像と、実際の医師は違いますよね。それと同じように研究者も、世間一般のイメージと現実のそれは違ってきます。理系であろうと文系であろうと、研究というのは割に合わない作業の積み重ねです。腰をすえてやる根気がいります。『あの日』では、実験のディテールが描かれてない。唯一疲労困憊したというエピソードが、実験によってではなく、若山照彦さん(現在は山梨大学教授)にケーキをつくってあげて大変だったというものでした。

  その一方で、男性研究者たちが小保方さんをどう称賛したかということは事細かに書かれています。たとえば、ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授に「これから先の留学にかかる生活費、渡航費は僕が援助する」と宣言されたとか、当時理研にいらした若山さんに「いままで見た学生の中で一番優秀な小保方さん」とメールをもらったとか。この本は、研究者の手記としてはあまりに表層的だと思いますが、STAP論文騒動のヒロイン小保方さんが書いたものとしては興味深かったです。

「捏造してないか」をチェックしないのは信頼関係

 (杉浦)「いかに努力したか」のディテールの欠如は私も違和感を持ちました。小保方さんが現実にちゃんと実験をしていたのかどうかも、具体的な作業の様子が描かれてないので見えてきません。

  一方で、おっしゃるように、男性研究者たちがいかに彼女を持ち上げていたかは事細かく書かれていて、その部分に反応する読者も多いようです。「彼女を祭り上げた大人の男性たちが、

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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