杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
「女の子」を売りにすることは果たして得なのか?
前回の前半に引き続き、ジェンダー研究の第一線の研究者で、武蔵大学教授の千田有紀氏に「小保方晴子」騒動についてお話を聞いていく。
(杉浦)最近、アメリカの研究者が、STAP細胞に似た現象についての研究論文を発表しました。そのため、「やっぱりSTAP細胞はあったのか? 小保方さんは間違っていなかった」という話題もネットでは盛り上がっていて、それも彼女の手記『あの日』(講談社)がベストセラーになった要因のひとつだと思うのですが。
(千田)研究の世界と、外の世界の温度差はそこですよね。仮にSTAP細胞があったとしても、小保方さんが正統な手続きを踏んで証明したものでなければ、意味がありません。
わかりやすく置き換えてみると、たとえば、どこかの誰かが「宇宙人を発見した」という論文を書きます。証拠とする写真も添付します。世紀の大発見と注目されます。ところがその写真がエイリアン映画のCG画像のトレースだったことが判明したら、もう世間はそっぽを向きますよね。その後、何十年かたって、本当に宇宙人がいたことが証明されても、そのトレースした人物は「あれは捏造ではなかった!」とはならないでしょう。
(杉浦)なるほど。小保方さんは自らの不正について「やっちゃいけないって知らなかった」と語っています。今、おっしゃったたとえ話に出てくるトレース職人が「トレースしちゃいけないって知らなくて」と主張しても誰も許しませんよね。なのに、どうして、小保方さんが「知らなかった。勉強不足だった」と涙ぐむと、同情する人が出てくるのでしょうか。
(千田)『あの日』を読んで興味を引かれたのは、彼女が徹底して「女の子扱い」されている点です。こんな記述がありました。”不正が発覚した後に、大学院時代の指導教官たちからは、(中略)「女子医大の先生たちとも、無意識に不正を行う子だったかもしれないと話している」「早稲田と女子医大のどちらがこんな人を育てたのか責任を押しつけあっている」などの内容を
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