弱い経営戦略とブランド構築 クールジャパンも同じ?
2016年03月25日
日本政府観光局が発表した2016年1月の外国人旅行者数は185.2万人と対前年同月比で52%増。1月としては過去最高の数だったという。そのペースは、月が変わっても衰えていない。今度は花見を目当てであろう観光客の増加で、日本政府は中国人団体客に向けて臨時ビザを発行しているという。
規制緩和により、外国人旅行客は増加しているのは事実だ。では彼らが日本に求めているものはなんなのだろうか。美しい桜をはじめ買い物する製品への信用や安全性、歴史的建造物や富士山のようなここにしかない世界遺産もそうだろう。しかし、近年キャッチフレーズとしても掲げられている「クール」を感じているのかと問われれば大きな疑問が残る。
もともと慎み深いことを美徳としてきた日本人。自己アピールを含んだプレゼンテーションは、向いていない国民だといえるだろう。そしてそんな国民性は、中央マーケットからみた地方の工芸にも相通ずるものがある。
工芸。英語ではクラフトと呼ばれ、機能性と実用性を兼ね備えたものづくりや作品をいう。日本であれば、金物なら新潟県の燕三条、磁器なら佐賀県の有田というように、伝統的に受け継がれてきたものであり、地域の柱となる産業である。こういう工芸の産地というのは、全国で約300あるという。しかしながら、どこも低迷の悩みを抱えているというのが現状だ。
創業1716年という奈良市の中川政七商店は、江戸時代から続く麻織物の老舗。多分にもれず、麻織物というジャンルが現代の日本においてなかなか難しい状況にあるはずだが、この老舗は他の工芸メーカーと一線を画す。コンサルタントという顔を持っており、全国の低迷にあえぐメーカーに打開策を導き出したり、創業300年となる今年は『大日本市博覧会』なる催しを全国で開催する。現当主である中川淳代表取締役社長を中心にして「日本の工芸を元気にする」というスローガンのもと、自社のみならず全国のものづくり業界の振興を図っているのだ。
「全国各地に工芸メーカーはありますが、低迷の理由はどこも共通点があります。それは、“経営がない”ということ。かつての工芸の世界においては、生産部門は良いものづくりだけを考え実行し、それを問屋に納めれば良かった。しかし、このシステムが壊れてしまった現在、収支に対する将来的な展望をもたない、つまり戦略がしっかりとないことが業績低迷の要因となっているのです」
かつて生産者は良い物を生み出していれば問屋が買い上げてくれていた。どういうものを作っていけばよいか、将来的な展望も、問屋と二人三脚で歩んでいたのがかつてのシステムである。しかしながら、この問屋と生産部門というパートナーシップが、アジアからの安価な製品の流入などで問屋が地場の生産部門と組まなくなってくる。もともと経営戦略というビジョンを持たずにきた生産者(社)は
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