足利事件の再鑑定の結果が出る前に死刑が執行された飯塚事件の死刑囚
2016年03月22日
第三の疑問としては、すでに連載の第3回の末尾でも触れたが、「死刑は、冤罪であった場合には取り返しがつかない。国家が罪のない人を殺してしまったことになるが、それでよいのか?」ということがある。
おそらく、この疑問が、最も反論の余地の小さい死刑廃止論の根拠になるだろう。連載の初回で言及した団藤教授も、死刑廃止論者となった理由として、明治時代以降無実の罪で処刑された人々が少なくなかった可能性が大きいことを挙げている。
無罪率が異常に低く、検察が有罪にこだわり、刑事系裁判官の多くが検察官に同調しており、したがって冤罪率も高いと思われる日本(『ニッポンの裁判』第3章、『絶望の裁判所』68頁)においては、この疑問は、ことに大きなものとなる。
実際、死刑確定後に再審で無罪となった事件が4件もあり、実際には無罪である事件の数はずっと大きいのではないかということをうかがわせるに十分である。
その4件とは、免田事件、財田川事件、島田事件、松山事件であり、逮捕から無罪判決までに約29年ないし35年がかかっている。これらの人々の人生はほとんど奪われたも同然だ。ひどい話ではないだろうか?
もしもこの人物が無罪であったなら、国家は、この人物の生命と名誉を文字通り奪い去ったことになる。これは、国家が絶対にしてはならないことの筆頭に挙げられるべき事柄である。
なお、久間氏の死刑執行後に行われた再審請求については、福岡地裁2014年(平成26年)3月31日(平塚浩司裁判長)が棄却の決定をしている。この決定についての疑問をも含め飯塚事件についてまとめ直した清水氏の文章が「新潮45」2014年7月号108頁以下に掲載されている。
その文章によると、2008年10月16日に「足利事件DNA再鑑定へ」との報道がされた直後の同月28日に飯塚事件の死刑が執行されている。足利事件の再鑑定の結果が出たのは2009年4月である。
なぜ先のような微妙な時期にあえて死刑を執行してしまったのか? 足利事件の再鑑定
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