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4大会連続の五輪を逃したなでしこは一から出直し

リオ五輪アジア最終予選で敗退、実力も体力も幸運もすべて使い切った奇跡の10年間

増島みどり スポーツライター

 リオ五輪出場切符わずか2枚をかけた女子サッカーのアジア最終予選(大阪・長居)がスタートした夜(2月29日)、振りかえれば、まさにあれが今大会の「なでしこジャパン」を象徴するシーンだったのだと思う。

オーストラリア戦の前半、先制点を許し、厳しい表情の日本の選手たち=年月日、大阪・キンチョウスタジアム拡大オーストラリア戦の前半、先制点を許し、厳しい表情の日本の選手たち=年月日、大阪・キンチョウスタジアム
  2年間で4度目の対戦となった強豪・オーストラリアとの初戦は重要だったにもかかわらず、日本の出足は悪かった。持ち味のひとつであるセカンドボール(こぼれ球)を拾えず苦戦するうちに先制点を奪われる。

 前半で追い付いて後半に勝負を、と誰もが考え攻撃に転じた40分、MF阪口夢穂(みずほ、日テレ)がサイドチェンジを狙って左足で繰り出したパスが、主審の背中を直撃。このボールがDFラインの裏を走り込んだ豪州のFWへ、よりによって絶好のスルーパスとして転がった。そこから試合をさらに難しい展開にする追加点を許してしまった。

  主審の背中に、しかも相手FWの絶好のポジションに転がる「不運」を見ながら、ふと、昨夏のW杯カナダ大会の鮮烈なシーンを思い出した。

  悲願でもあった2大会連続決勝進出をかけて準決勝でイングランドと対戦。2011年、初優勝を果たしたドイツ大会でも唯一、グループリーグで勝てなかった強豪との試合はロスタイムも終わろうとし、延長が頭をよぎった頃である。右サイドから川澄奈穂美がゴール前に入れたボールを、DFバセットがスライディングで止めようとするが、このボールが自陣のゴールに吸い込まれてしまう。痛恨のオウンゴールに、ショックを受けたバセットは過呼吸に陥り医務室に運ばれ、日本は2大会連続決勝進出の快挙を果たす。信じられないような結末は、「幸運」を掴み取るなでしこたちの象徴といえる1試合だ。

  しかしその7カ月後、幸運はついに手のひらからこぼれ落ちた。彼女たちがこの10年間、積み重ねてきたサッカーが研究し尽くされている限界を思い、同時に、小さな体を精一杯使い切って掴み続けてきた「運」にも、もしかすると限度はあるのだろうか、と考えた。

なでしこのいないオリンピックは考えられない

  「流れに乗るためにも初戦には絶対に勝ちたい」(佐々木則夫監督)と臨んだ豪州戦を1-3で落とし、04年、アテネ五輪出場権を国立競技場で獲得したリオ五輪出場権獲得に向け黄色信号が灯った。前日、激励のため合宿(大阪・堺)を視察に訪れた鈴木大地・スポーツ庁長官はメディアを前にこう言った。

  「なでしこは、日本の団体競技、日本選手団のシンボルともいえる存在です。彼女たちのいないオリンピックなんて、まさか考えられません」

  豪州戦後、韓国には引き分け、中国に敗れ、他力での出場も絶望的に。ベトナムと北朝鮮に連勝して5試合で2勝2敗1分け、勝ち点は7と3位に終わり、リオは、長官がまさか考えられないと前提した「なでしこのいないオリンピック」となった。

  勝ち点11と2位以内で五輪出場を決めた2位中国とは4点差。実力を出し切れなかった、その原因を、チームの不協和音や世代間ギャップにあると分析するのも可能だが、失点7は最下位のベトナムをのぞけば4カ国で最低。無失点試合は北朝鮮戦だけと、過去のアジア予選ではなかった守備の破綻を見れば、むしろ実力通りの結果だったといえる。

選手と監督の長過ぎた、しかし幸せな春を終えて

  不思議だが、リオ出場を逃がし、なぜかホッとした。アトランタ五輪に出場した後、

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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