杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
大工から歌舞伎町のクラブに転じ、年収1億円を稼いだ青年の顛末
タレントで医師の脇坂英理子(37)が診療報酬の不正請求の容疑で逮捕された。脇坂容疑者はホストクラブでの豪遊ぶりをテレビカメラの前でも披露して、一晩に900万円使った経験もあるとコメントしていた。ホストを巡って、口論にした他の客から脅迫された事件も報道された。脇坂容疑者の逮捕報道に私が興味をもったのは、彼女が指名していたホスト(本稿ではA氏としよう)を知っていたからだ。取材で会ったことがある。彼は脇坂の担当ホストとしてもテレビに登場しているが、カメラを通してみる印象と、実際はまったく違うのだ。
脇坂容疑者は小学校から高校まで東洋英和女学院で過ごし、その後、東京女子医大に進学している。そういうお嬢様育ちの女医がどうして、彼にのめり込んでいったのか。その理由を、担当ホストA氏の素顔を語ることで考えてみたい。
ある作家のインタビュー取材と撮影で、歌舞伎町のホストクラブに行った。開店前の店内で、人気ホスト3人に作家が囲まれて、という写真を撮るためだ。作家のインタビューも店でしたので、何時間もホストクラブに滞在した。
取材でいろんな場所に行ったが、その中でも、この開店前のホストクラブを見ることができたのは刺激的な経験だった。私の先入観とはまったく違う世界だったからだ。
まず、ホストたちが飛び抜けてかっこいいということだ。私は記者なので、インタビュー取材などで、大手芸能事務所に所属するイケメン俳優たちにも会ってきた。中にはゴールデンタイムの連続ドラマで主役を演じているスターもいる。
そういう経験があるので、私は職業的に飛び抜けたイケメンを間近で見るのに慣れている。だが、今まで会った中で「一番容姿端麗だった男性は」と聞かれたら、「歌舞伎町のホストたち」と答える。この取材で私が遭遇した3人のホストのうちのひとりがA氏だった。
歌舞伎町のホストの魅力は、実際に会ってみないと分からないはずだ。テレビでみる彼らはさほどかっこよくない。彼らは接客業なので「直接会って美しい容姿」なのが求められるからだろう。カメラを通すと、その魅力は激減する。
実際、その取材の記事が掲載された雑誌をみても、彼らは別人のようにパッとしなかった。
一般の人間でも「実物は美人なのに、写真を撮ると不細工になる」という人はいるが、ホストたちはそういう容姿をしている。
今回、この記事を書くため、A氏が出ている動画を何本かみたが、会った時と全く雰囲気が違った。チャラくて、なよっとした感じに振る舞っていたが、
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