2次予選首位通過、W杯6大会連続出場への合言葉は「ノーモアシンガポール」だった
2016年04月01日
就任から3月で1年となった監督の会見は、質疑応答ではなくほぼ監督の主張の繰り返しになる。記者たちも、はぐらかされないようにとあの手この手で質問の内容を工夫するのだが、「ハリルの壁」は分厚い。
シリア、シンガポール、アフガニスタン、カンボジアと繰り広げた2次予選での得点27は、8つのグループ中トップのオーストラリア、カタールの29点、サウジアラビアの28点に続いて3番目で、失点0は、日本と韓国のみ。こうした明確な数字をもとに、2次予選の「成績表」を監督につけてもらえないかと質問してみたが、何故なのか試合の審判批判へと展開する。苦笑いしながらメモを取っていると、「思えば、受け入れがたい引き分けで始まったこの予選でした・・・」と、昨年6月ホームでの(埼玉スタジアム)初戦、シンガポールとのスコアレスドローを厳しい表現で振り返った。霜田正浩ナショナルチームダイレクターに寄れば、以来、合言葉は「ノーモアシンガポール」だったという。
欧州から全てのトップ選手を招集し、圧倒的な力を見せつける目論見が、ランキングでは明らかに下に位置するシンガポールに大苦戦を強いられた。過去に例のないスコアレスドローでの発進は、ブラジルW杯後、アギーレ監督の解任で重要な1年間を無利益に費やしてしまった代表の深い落胆と、監督のサッカーがどこまで浸透するのかといった不安を増幅してしまった。
しかし3月29日、首位通過を「シリアとの決勝戦」と位置付けた日本はオウンゴールを含めて5得点をあげ、シンガポールショックを払拭。周囲が思う以上の打撃で、非常事態から船出したハリルジャパンが、時間と手間をかけながら、ピッチでもそれ以外の場でもやっと「通常業務」に戻ったかのような選手の安堵、コメントが印象的だった。
最終予選進出国は日本のほか、サウジアラビア、オーストラリア、カタール、イラン、タイ、韓国、ウズベキスタン、UAE、シリア、イラク、中国。半分の6カ国が中東諸国で今回は6カ国2グループのため、中東でのアウェーはW杯の行方を左右する重要なポイントにもなる。こうした中、本来ならば大歓迎すべき日本代表の「成熟度」は、不安要素にもなりかねない一面を抱える。若手の伸びが追いついていないからだ。
29日、FWとしては初めて岡崎慎司(29=レスター)がデビューから8年で日本代表100試合出場を達成した。48得点だけではなく勤勉さや向上心、岡崎がもたらしたものははかり知れない。
同級生トリオも同じく健在だ。予選で6試合連続ゴールを決めて変わらぬ存在感を見せた本田圭佑(ACミラン)、左サイドの長友佑都(インテル)。10年の南アW杯から6年間主将を務める長谷部誠(フランクフルト)は1月に32歳となった。岡崎の100試合に続きシリア戦後、長谷部は97試合、長友88試合、本田80試合、南アW杯ではサポートメンバーに留まった香川真司(ドルトムント)も27歳ながら早くも79試合と、5人の代表Aマッチ数平均だけでも実に88試合にもなる。日本代表を長くけん引してきたメンバーのキャリアの充実ぶり、代表への献身は日本の魅力であり、チームの成熟を表す存在でもある。
一方、これだけのキャリアの選手が100試合出場を叶える状況は、彼らを押しのけ世代交代をする若手の力不足にも理由はある。2015年のアジアカップですでに日本代表の平均年齢は27歳を超え、
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