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怒りを露わに……そして弱点を克服した羽生結弦

デニス・テンは故意に羽生を妨害したのか?

青嶋ひろの フリーライター

異様な雰囲気のもとで……

 試合当日の公式練習で起きた、小さくないアクシデント――カザフスタンのデニス・テンに練習を「妨害」された怒りで、羽生結弦が声を荒げるなどした件。これについては、<付記>で記したい――。

男子SPで首位に立った羽生結弦拡大世界選手権の男子SPで首位に立った羽生結弦
 そこから1日も置かずに本番を迎える選手たちのコンディションを、人々は大いに心配していた。

 さすがにこれは、精神的にきつい。

 特に当事者となった羽生の怒りと、それを人々の前で露わにしたことへの動揺、後悔……。

 極限まで集中するべき試合の前、メンタル的には最悪と言っていい状態だ。

 練習の調子も、良くなかった。

 荒れる気持ちそのままにジャンプの着氷は乱れ、納得のいかない跳躍を繰り返しては、顔をゆがめている。

 これは無敵の羽生といえど、ショートプログラムでもしかしたら完璧に滑ることは難しいかもしれない――当日練習を取材していた人々はそう囁き合ったほどだ。

 だからショートプログラム本番で、2度の4回転もトリプルアクセルも、きっちり決めたパーフェクトの演技を見て、心底驚いてしまった。

 同じ公式練習を滑ったライバルたち、パトリック・チャン(カナダ)も、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)も、宇野昌磨も、みな大なり小なりジャンプミスをした。羽生とひと悶着あったデニス・テンに至っては、ふたつのジャンプミスで12位という、信じられない順位に沈んだ。

 異様な雰囲気に染まった公式練習を経ての、シーズン最後の大一番。みなが多少動揺し、ピリピリした空気の中で調子を崩してしまったようにも見える。

 そのなかにあって、騒動の中心にありながら、ひとり、微塵も揺るがない完璧な演技を見せてしまう、この男。そら恐ろしいほどの強さは、もう「王者」や「帝王」を超え、「魔王」の域にあるのではないだろうか。

 練習から最終グループを支配し、自分ひとりがモンスターのような強靭なメンタルで、高みに上り詰めていく……。

「色悪」になった羽生結弦

 羽生結弦は爽やかな好青年で、品行方正な王子様というイメージが、ソチ五輪以降付きまとっていた。

 しかし本当の彼は、 ・・・ログインして読む
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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

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