練習に間違いはなし。ならば、練習以外に必要なものは――
2016年04月13日
宇野昌磨には何が足りなかったのか?(上)――早すぎた成長。気楽さを味わえる時間が短すぎた
フェルナンデスはなぜ羽生結弦に勝ったのか?――世界選手権に合わせたピーキングの見事さ
怒りを露わに……そして弱点を克服した羽生結弦――デニス・テンは故意に羽生を妨害したのか?(WEBRONZA)
何より宇野昌磨本人が辛そうだったのは、世界選手権のための練習をたっぷりと、納得がいくまでしてきたのに、それが肝心の場所で出し切れなかったことだった。
練習での宇野昌磨を知っている人々は、「試合でなぜこんなミスをしてしまったのかわからない」と言う。
それほど、ホームリンクでの彼のジャンプは完璧だった。
4回転2本、トリプルアクセル2本を入れたフリーの通しを、一日何度もパーフェクトで滑っているという。
さらに人々を驚かせた、フリーのあのジャンプ構成! 8本のジャンプの最後の3本が、なんと4回転トウループ、トリプルアクセル、トリプルアクセル‐トリプルトウのコンビネーション。スタミナの尽きる後半の最後の最後に、高難度ジャンプ3連発、である。
トップグループの他の選手のジャンプ構成と比べてみてほしい。
羽生結弦、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)、ボーヤン・ジン(=金博洋、中国)でさえ、ラスト3本にはトリプルアクセル1本が入るのみ。他の選手はすべて、トリプルルッツまでの難度の低いジャンプで締めくくっている。
4回転やトリプルアクセルなどというリスクの高い、体力の必要なジャンプは、フリーの序盤で跳んでしまうのが定石なのだ。宇野自身も、四大陸選手権までは4回転トウループ1本を後半に持ってくるのみで、フリー序盤に4回転1本、トリプルアクセル2本を跳んでいる。
それが、よりによって世界選手権で、非常識なほどの難度で向かってくるとは!
この大胆な「作戦」を知った時、宇野とコーチたちの攻めの姿勢に大いに驚かされた。彼は現在、4回転ループを習得中で、実戦で使える4回転はトウループ1種類のみ。羽生やフェルナンデスのように3本の4回転をフリーに入れられない代わりに、後半のボーナス加点を狙って大玉ジャンプを最後半に集中させてきたのだろう、と。
しかしこの構成を始めたきっかけを聞くと、さらに驚かされてしまう。
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