杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
東京23区内の私立保育園は公務員並みの待遇という声も
保育士不足が大きな問題になっている。特に若い世代の保育士離職が目立つ。どうして保育士はみな辞めていくのか。むろん、収入面の問題もあるが、現場を取材するとそれ以外の大きな要因がみえてくる。今回は3回に分けて、保育士が不足する理由を考えていきたい。
1回目の(上)では、保育士の薄給ぶりが報道されるが、実際、調べてみれば、東京23区内の保育士たちの給与は決して低くないことを紹介する。また、2回目の(中)では、好待遇でも保育士が不足する理由を”女子の職業カースト”の点から見てみる。3回目(下)では、若い保育士の離職が止まらない理由について考えてみる。そこには保育園を利用する母親たちの変化もあるようだ。
最近、保育士の給与の低さを報じる記事が目立つ。
”厚生労働省による調査によると、保育士の賃金は月額20万円で、全産業の月額平均29万円を大きく下回る”といった具体的な数字を挙げたものがたびたび報道されている。
これに対して、一部の保育園関係者たちは「保育士のイメージを下げるのでは」という危惧を抱く。
首都圏の保育園経営者はいう。
「報道で”保育士=ワーキングプア”というレッテルをつけられると、ますます学生が保育士になるのを敬遠してしまう。あれらの記事の中で、比較として引用されている全職種の月額平均は、男性労働者が過半数を占めるデータです。一方、保育士のデータは9割以上を女性が占める。単純に比べられないのでは」
数値は厚生労働省の賃金構造基本統計調査からの引用と思われるが、この調査の平成26年度分をみると、女性正社員・正職員の平均月額賃金25万円であり、保育士たちとの差は縮まる。また、この女性正社員・正職員には長時間労働を強いられる情報通信産業や、医療、中学校教諭なども含まれる。
「20万というのはあくまでも全国平均値で、都内だともっと高い。地方だと確かに安いがそれは地域格差の問題として論じるべきでは」(保育園経営者)
この保育士の待遇問題に関しては、「駒沢の森こども園」を経営し、マスコミにもたびたび登場する角川慶子氏はが『サイゾーウーマン』(2016年4月6日配信分)のコラムで以下のように書く。
”保育士は薄給と言われていますが、
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