自分の社会的影響力を再自覚し、成長の機会に
2016年04月30日
左足首の負傷が、全治2カ月と発表された羽生結弦。それだけの怪我を抱えながら挑んだボストン世界選手権で、それでも2位だったのは羽生だから成し遂げられたことだろう。
これでフリーで不調だった理由も、また彼らしくないピリピリした態度を見せた理由も、説明がついたような気がする。
全体的にレベルの高い充実した戦いであったものの、日本のファンにとっては今ひとつ後味の悪いものが残る大会となってしまった。
今シーズン、世界記録を2度も出した羽生結弦がフリーで実力を出し切れず、2年連続2位に終わってしまったことは残念だったが、スポーツではそれほど珍しいことではない。
だが、男子SP当日の公式練習中で起きた、デニス・テン(カザフスタン)の妨害疑惑事件に関しては、多くの問題が浮き彫りとなった。
筆者はボストンで、この一件に関して大会運営責任者、ISU(国際スケート連盟)のピーター・クリックにコメントを求めたが、「自分は見ていないし、コメントはない」と、不機嫌そうに吐き捨てて足早に去っていった。
その後広報担当者を通して正式に、選手の公式練習中の安全規定などに関するISUの見解を求めたが、現在に至るまで返答はない。
どれほど社会で騒ぎになろうとも、都合の悪いことには我関せずを決め込むISUの体質は、昔から変わっていない。
6点満点の旧採点方式時代には、欧米の記者たちを中心に、大会後に採点に関するレフリーの会見を行って欲しいとメディア側はたびたび要請してきた。だが最後まで実現せずに、そのツケが積もり積もって起きたのがソルトレイクシティ五輪のペア採点疑惑に伴う、一般社会まで巻き込んだ大スキャンダルである。
その結果、採点方式に大鉈(おおなた)を入れて、「以前より主観性が少ない」とされる現在の加点方式ができあがった。
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だがあの一件も、ジョン・ハンコックなど北米の五輪スポンサー企業が降りると脅してこなければ、ISUは動かなかったに違いない。
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