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羽生結弦への練習妨害疑惑事件を考える

自分の社会的影響力を再自覚し、成長の機会に

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

国際スケート連盟の対応は?

 左足首の負傷が、全治2カ月と発表された羽生結弦。それだけの怪我を抱えながら挑んだボストン世界選手権で、それでも2位だったのは羽生だから成し遂げられたことだろう。

 これでフリーで不調だった理由も、また彼らしくないピリピリした態度を見せた理由も、説明がついたような気がする。

2位に終わった羽生結弦拡大3月の世界選手権(アメリカ・ボストン)で2位となった羽生結弦

 全体的にレベルの高い充実した戦いであったものの、日本のファンにとっては今ひとつ後味の悪いものが残る大会となってしまった。

 今シーズン、世界記録を2度も出した羽生結弦がフリーで実力を出し切れず、2年連続2位に終わってしまったことは残念だったが、スポーツではそれほど珍しいことではない。

 だが、男子SP当日の公式練習中で起きた、デニス・テン(カザフスタン)の妨害疑惑事件に関しては、多くの問題が浮き彫りとなった。

 筆者はボストンで、この一件に関して大会運営責任者、ISU(国際スケート連盟)のピーター・クリックにコメントを求めたが、「自分は見ていないし、コメントはない」と、不機嫌そうに吐き捨てて足早に去っていった。

 その後広報担当者を通して正式に、選手の公式練習中の安全規定などに関するISUの見解を求めたが、現在に至るまで返答はない。

 どれほど社会で騒ぎになろうとも、都合の悪いことには我関せずを決め込むISUの体質は、昔から変わっていない。

 6点満点の旧採点方式時代には、欧米の記者たちを中心に、大会後に採点に関するレフリーの会見を行って欲しいとメディア側はたびたび要請してきた。だが最後まで実現せずに、そのツケが積もり積もって起きたのがソルトレイクシティ五輪のペア採点疑惑に伴う、一般社会まで巻き込んだ大スキャンダルである。

 その結果、採点方式に大鉈(おおなた)を入れて、「以前より主観性が少ない」とされる現在の加点方式ができあがった。

 だがあの一件も、ジョン・ハンコックなど北米の五輪スポンサー企業が降りると脅してこなければ、ISUは動かなかったに違いない。

公式練習は変えられるか

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

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