震源となった断層の横で揺れに耐えた女子サッカークラブ「益城ルネサンス」
2016年05月02日
熊本地震が起きた14日夜、クラブはナイター練習が終わりちょうどミーティングを始めたところだったという。あまりの激しい揺れに、ミーティングをしていた円陣のまま全員で手をつなぎ、肩を組んでしゃがみ込んでしまった。長い揺れに耐えた選手たち、スタッフが安全確保のために照明やクラブハウスを振り返ると倒壊していた。
「全員がグラウンドの中央に集まっていたので落ち着いて動けたのだと思います。町中の被害状況が分かり、グラウンドは震源となった断層のすぐ横だったと判明し恐ろしくなりました」
熊本地震で甚大な被害を受けた益城町をホームタウンとする女子サッカークラブ(九州リーグ)「益城ルネサンス熊本フットボールクラブ」を今季から率いる千葉弘樹監督はそう明かす。監督は一昨年まで強豪、INAC神戸でコーチを務め今季益城へ。ルネサンスは、女子サッカー界では草分け的存在で、かつて全日本選手権(皇后杯)に12回出場した名門だ。熊本、地元有力企業の協力態勢を得て充実した経済基盤を築いている。
地域リーグの上にある「なでしこチャレンジ」、その上の「なでしこリーグ」2部、さらにトップリーグの1部への昇格を見据え本格的な強化をスタートさせたばかりだった。
防災の拠点となる益城町役場に勤務する選手、益城病院に勤め地域医療に携わる選手と、それぞれが地元との強い結びつきのなかでサッカーを続けている。千葉監督によれば、選手も自宅が全壊するなど被害は受けながらすぐに持ち場に帰ったそうだ。
災害があるたびに、もはや定型文のように「スポーツで勇気と元気を与えたい」との発言が溢れる。しかしこうした感情論を口にする前に、スポーツ界が取り組める支援態勢の整備を検討していけないだろうか。
スポーツ界はすぐさま募金活動を開始し、選手たちが競技場や街で支援を訴えた。こうした募金は主に赤十字、県が指定する口座に送金される。こうした支援とも連動しながら、日本サッカー界は独自に動いた。機動力を支えるのは、全国に巡らされた組織網だ。
地域密着を掲げるJJリーグは、主に地域のJクラブを通じてリアルタイム情報を収集。日本サッカー協会は全国に法人化された地域協会を傘下に持つ。さらに「こころのプロジェクト」として、各地小学校で授業を行う「夢先生」の派遣では教育委員会、グラスルーツ(草の根活動)部門ならば自治体と、組織上、サッカーを超えて地方各所との緊密な連絡が取れる態勢にある。
このため両団体とも、震災の翌日には現地に職員を派遣している。選手、クラブの被災状況、グラウンドの被害調査はもちろんだが、サッカー関係者のために限定した支援ではない。先遣部隊の視察で、どこまでどういうサポートができるか、報告を日々検討し準備を始めた。
益城には22日に日本協会・田嶋幸三会長が、福岡から入った。現地のサッカー協会からの要望を受け、サッカーボール、ビブス(練習で使用するベスト)といったサッカー用具に加え、テント、寝袋、水、カップ麺や菓子パンの食料品、生活用品など現地で求められている物資も持参した。
ルネサンス側は「現地まで来てもらい心強かった。何よりもサッカー関係者だけではない、避難所への温かい支援も受けて感謝している」と安堵した様子だった。
甚大な被害によって役場など公的機関の初動が遅れ、混乱も起きるなか、特にサッカー界は情報網を最大限に活かして動き続けている。
日本協会はJリーグとも協調し地震から1週間経たずに、被災地を支援するため5月11日、鳥栖で行われるリオ・オリンピック代表がガーナと行う親善試合を「チャリティマッチ」に制定。本来ならば
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