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なぜ「不倫」がいま注目されるのか(上)

タブーが恋愛ドラマを盛り上げる

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 2016年に入って、何人のセレブリティたちが不倫スキャンダルで失脚しただろう。タレントのベッキー、宮崎謙介衆議院議員、文筆家の乙武洋匡。2016年現在、不倫は「絶対に許されないこと」になっている。今回は3回に分けて、不倫の現在について言及していきたい。(上)では不倫ドラマが複数放映される理由を考え、(中)では、バッシングされる不倫と、されない不倫の違いについて言及し、(下)ではなぜここまで不倫御法度の時流なのかについて書いていく。

木村佳乃と伊藤英明が出演しているドラマ「僕のヤバイ妻」=フジテレビ提供拡大木村佳乃と伊藤英明が出演しているドラマ「僕のヤバイ妻」=フジテレビ提供
  さて、今回は、テレビドラマだ。不倫スキャンダルが大問題になる一方で、この4月からのスタートした連続ドラマで「不倫」を題材にしたものが並ぶ。林真理子原作の『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)が再ドラマ化された。フジテレビ系の『僕のヤバイ妻』は、男性主人公が不倫相手と共謀し、妻を殺そうとした夜に違う事件が起きる......というサスペンスだ。

  また、元AKB48の前田敦子は『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)で妻子ある男性との不倫に陥る未婚の女性記者を演じている。この不倫ドラマ乱立の状態について、私はなんどか取材を受けた。「なぜ、不倫を批判する論調が強くなる中で、不倫のドラマが同時期に何本も放送されるのか」とのことだった。今回はこの理由に言及してみたい。

恋愛ドラマが作りにくい時代

  『週刊文春』(2015年6月16日号)の『私の読書日記』で、作家の池澤夏樹氏が次のように書いている。

  "今は恋愛小説が書きにくい時代である。古代ギリシャで生まれた恋愛小説の基本形は、恋する二人がいて、いろいろと邪魔が入って、最後にはめでたく結ばれるというものだ。しかし、現代では恋の邪魔をするものはあまりない。家柄や、戦争や、病気は恋を妨げる力を失った。邪魔が入らないと恋は情事に堕する。「もう百年もすると、互いの口に舌を差し入れても何も感じなくなる」とロレンス・ダレルは言った。それから五十年たった。"

  つまり、恋愛を小説、映画、ドラマ等々のフィクション作品の主題として盛り上げるためには、惹かれ合う2人の間に障害物が必要になってくる。昔ならば、身分の差や病気、戦争といった様々なものが恋を邪魔してくれた。しかし、身分制度はとうの昔になくなり、医療の進歩で"不治の病"は激減し、戦争も少なくとも日本においては"目の前にある障害"にはなりづらい。

  こうなってくると、恋愛をテーマにした小説やドラマは作ることが難しくなってくる。

  池澤氏がこのコラムを書いたのと同じ頃に、テレビ関係者たちも似たようなことをよく口にしていた。「セックスにタブーがない時代になってしまうと、

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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