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多様な人材育成の理念と乖離する法科大学院の現実

小手先の再編ではなく、問題に正面から向き合うべき時だ

斎藤剛史 教育ジャーナリスト

 文部科学省がまとめた2016年度の法科大学院の入試結果によると、志願者は延べ8274人で、04年度の制度創設以来、初めて1万人を割り込んだことが分かった。また入学者数も全体で1857人と初めて2000人を下回った。日本版ロースクールとして鳴り物入りで誕生したはずの法科大学院の衰退が止まらない。法科大学院は今後、どうなるのだろうか。

ピーク時の74校から45校にまで減少

斎藤原稿につく写真甲南大学法学院の授業=神戸市東灘区
 法科大学院は、米国のロースクールをモデルにして、より実践的な法曹養成を行うため04年度から創設された。原則として司法試験は法科大学院修了者しか受験できなくなり、しかも政府が当初、法科大学院修了者の「7~8割」が司法試験に合格できると打ち出したことで人気に火がついた。

 04年度に68校でスタートした法科大学院は、志願者延べ7万2800人を集め、志願倍率は13.0倍を記録。翌05年度には全国で74校に増えて、ほぼピークといえる06年度入試では、入学定員5825人に対して志願者は延べ4万341人、志願倍率は6.9倍、そして入学者は5784人、入学定員に対する入学者の割合である入学定員充足率は99.3%となった。

 ところが、一転して16年度の入試の状況を見ると、法科大学院は45校に減少しており、入学定員は全体で2724人(ピーク時より53.2%減)、志願者は延べ8274人(同79.5%減)、志願倍率は3.0倍、入学者は1857人(同67.9%減)、入学定員充足率は68.2%というところまで落ち込んでいる。

低い司法試験の合格率

 法科大学院の凋落の原因は何だろう。答えは簡単だ。法科大学院を出ても司法試験に合格できないからだ。05~14年度修了者の司法試験の累積合格率は50.3%となっている。つまり、貴重な時間と高い学費をかけても最終的に2人に1人しか司法試験に合格できないというのが法科大学院の実態だ。これではあまりにリスクが大きすぎると判断されても仕方ないだろう。

 こうなった原因の一つは、政府が司法試験合格者の大幅増員を実現できなかったからだ。政府の司法制度改革審議会は01年、欧米のような契約社会の到来に備えて当時年間1000人程度だった司法試験合格者を年間3000人に増やすことを提言。それを受けた政府は02年に法曹の増員を閣議決定した。

 しかし、現実には弁護士の就職難などが問題化して、司法試験の合格者は年間1800~2000人程度で推移したまま、結局、政府は13年に年間3000人の法曹養成目標を事実上撤回してしまった。

 そしてもう一つの原因は、法科大学院が関係者の想定以上に増えたことだ。法学部を持つ大学は、法科大学院がなければ学生に司法試験を受けさせることができないため、大学の面子も絡んで法科大学院の設置が行われた。その中にはそれまで司法試験とほとんど関係のない大学も少なくなかった。

文科省は補助金カットで法科大学院を整理再編

 実際、ピーク時で74校あった法科大学院は玉石混交で、司法試験合格率が毎年50%を超えているところもあれば、合格率が一桁というところもあり、ほとんどが定員割れという状態だった。

 このため文科省は、「公的支援の見直し」として補助金や交付金の削減という方法で何度か法科大学院の整理を狙い、そして15年度からは法科大学院を5段階にランク付けして、補助金を傾斜配分するという方式を導入した。さらに16年度は最低ランクの法科大学院は補助金をゼロにすることにして、4校がこの対象になった。

 この補助金カットの方針を受けて14~16年の3年間で20校以上の法科大学院が学生募集の停止などに追い込まれているが、文科省は17年度以降も補助金の傾斜配分を強化することにしている。ここで注目されるのは、

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